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1 : ◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/08(木)10:31:44 ID:EeB [1/1回]

空を見上げれば飛行機が飛んでいる、街を携帯片手に歩く人々がいる。
時代の流れと共に科学が発展し、世界が技術の渦の中に沈んでいくその裏で、古い昔から血を受け継ぎ術を紡ぎ続けた密やかな存在があった。
オカルトだとそれを鼻で笑う人々がいる、非科学的だと否定する人々がいる。
しかし確かに、『魔法使い』達はこの時代を生き続けていた。

【キャラシートテンプレ】
【名前】
【性別】
【年齢】
【職業】
【容姿】
【魔法、能力】
【装備】
【概要】

【魔法生物テンプレ】
【名称】
【外見】
【概要】

【スレのルール※必読】
・荒らしによりなりすまされる可能性があります。防止の為、書き込みやキャラシート投下の際には必ず酉を使用してください。
・世界観や他参加者様のキャラクターに影響を及ぼす大規模な設定を作る事は、この遊びの醍醐味の一つでもありますし、
 使い方次第で物語に広がりを持たせる物ですので全面的な禁止等はいたしません。
 ただ、同時にそれらはトラブルを生む原因になってしまうかもしれませんので、事前の相談だけは必ずする様にお願いいたします。
・当スレは基本的に参加者様の素性を問いません。
 当スレ内の規約やなりきりという遊びの規則をきちんと守り、他参加者への気遣いが出来るのであれば、どなたでも歓迎いたします。
 ただし、当然ですが他参加者様への迷惑行為や、他スレでの迷惑行為等が確認された場合は、荒らしであると判断し即時アク禁の対象となりますのでご注意ください。
・R18描写は好き嫌いが分かれる為原則禁止です。
・相手が不快になるロールはしない様に、もししてしまい相手から注意を受けたら、素直に謝った上で改善しましょう。
 何度か注意を受けても改善が見られない場合は、アク禁等での対応をする場合があります。
・トラブルになりそうな事案は慌てて個人で解決しようとせず、スレにいる他の人達と一緒にどうするかを考えましょう。
・キャラシートは必ずしも必要ではありませんが、キャラシート無しでのロールをする場合、相手が不利にならない様極力ロール内で必要な情報は開示しつつロールをしましょう。
・何をするにもプロレスが原則です、一方的なロールにならない様気を付けましょう。

【当スレは】
テストロールスレです。
キャラシートの投下等は、相談議論スレを使う様にお願いします。

【追記】
次スレは、スレ主を引き継いでくださる予定の◆GWbu7aYnvM様にお願いします。
もし御多忙等の理由で都合が悪くなってしまったという場合は、その旨をお知らせ下さい。
その際相談の末どうするかを決める形を取ろうと思います。
2ヒルマン◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/11(日)18:59:40 ID:uvr [1/1回]

深夜、人々が寝静まり、一部の夜行性魔法生物達が活動を再開する頃。
この時間帯を待つ魔法使いも多い。

人気の無い路地の裏、小刻みに点滅する街灯の下で、一人と一匹が睨み合いを続けていた。
煙草を咥え甘い香りを漂わせる長身痩躯の男と、灰色の煙の様に揺らめく毛並みを持つ狼だ。

「……」

物言わず立ち尽くす男と、低く唸りながら警戒を続ける狼。
男にしてみれば、隙を見せる事で目の前の狼に噛み付かれる事を恐れているし、狼にとってもそう。
故にかれこれ30分近く、この膠着状態は続いていた。
3狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/11(日)23:23:20 ID:qKP [1/1回]
>>2
「――ひあっ!?」

膠着の睨み合いを横切ったのは小さくか細い悲鳴。男の正面、狼の背後から。
明らかに双方の注意を引く行為に、しまったと遅れて両手で口を塞ぐのはまだ幼い少女であった。
ポロシャツにジャージの半ズボンと、いかにもちょっとした買い物に向かうような装い。

「あの、そのっ……!だ、大丈夫ですか!?」

多分に懸念を含んで呼びかけるのは、こんな通りで男が一人微動だにせずいるという、異様な光景を目の当たりにしたからだけではないだろう。
明滅する街灯が当惑の表情を照らすのは、相対する獣の姿を正しく捉えているからに相違なく。
肩を縮めてぎゅうと強く握った胸元の竹筒から、朧な魔の気配がゆらり立ち昇った。
4ヒルマン◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/12(月)00:12:40 ID:hlz [1/5回]
>>3

「!」

静寂を断ち響く声に、男の視線が一瞬逸れた。
その一瞬の隙を突き、狼は強靭な足のバネを目一杯に使って少女の方へと舵を切る。

「……逃げろッ!」

少女に向けた短い叫び。
それと同時に両手を覆っていた手袋を脱ぎ捨てて、右掌を上向ける。
青白い光が陣のシルエットを浮かび上がらせ、やがて掌の上に親指程のサイズの魔力の弾丸が現れた。

しかし、予期していなかった事態で判断は少し遅れている。
その間に狼は灰煙を軌道上に残しながら、鋭い牙を剥き出しにして少女の腕にでも噛み付こうとしているだろう。

それは『煙たい狼(スモーキーウルフ)』、日本では煙狼とも呼ばれる魔法生物だ。
病や怪我で弱ったイヌ科動物に憑りつき命を長らえさせる代わりに、肉体の自由を奪い、あらゆる生物に対して毒性を発揮する煙を撒き散らす。
毒自体は、吸い込み過ぎなければ眩暈や頭痛を引き起こす程度で解毒も十分に可能な物だが、何よりも厄介なのは積極的に人に襲い掛かるその性質だろうか。
その狂暴性は、少女に躊躇なく噛み付こうとしている時点で十二分に伝わる筈だ。
5狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/12(月)00:39:56 ID:mE8 [1/4回]
>>4
「え、ぁ……」

両者を取り巻く剣呑の空気からして、凶牙がいずれ襲い来るのは自明であり。
狐塚つゆりは急な暴力に反応できるほど荒事に慣れているわけではない、迫る毒煙の狼を前にして立ち竦んだまま。
しかし、彼女が使役する存在はそうではない。

「――――ポチ!!」

少女の叫びに呼応して、首に提げた竹筒から何かが溢れ出る。
光の届かない影が液状化したかの如く、暗く黒いタールのようなそれは、竹筒の容積を無視した質量で。
瞬く間に獣、それも狐らしきシルエットを象ったかと思えば、四つ足を地につける様は紛れもなく実体であり。
主と不届き者の間に躊躇いなく身を滑らせ、霞む狼の顎を掬い上げるように頭から突き当たった。
6ヒルマン◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/12(月)09:37:55 ID:hlz [2/5回]
>>5

突然の介入に驚く煙狼の顎に、『ポチ』と呼ばれた獣の頭突きが突き刺さる。
煙狼は一瞬苦悶の形相を浮かべると改めてポチに敵意を向けた。
毒の吐息を吐き、低い唸り声をあげる。
……ポチに毒が通じるのかどうかは分からないが。

「(……魔法生物の類を使役しているのか)」

煙狼の後方、男は少女に対し興味深そうに目を細めて、煙草の煙を二、三度吐き出す。
実際興味深いのだ、未知の魔法生物に対する探求心はこの男の行動原理の一端も担っている。

「(直線軌道……範囲攻撃は少女にも当たる、なら『射出』は曲線、『性質』は……貫通)」

ほんの僅かに掌を丸めると陣が形状を変える、右掌上に形成した弾丸が僅かに細長く変化した。
続いて薄赤色に光る左掌の陣。
次の瞬間、弾丸は弾かれたように上空に向かって飛び出し、軌道上に青白い光の線を描きながら煙狼の頭上へ。

煙狼がポチに襲い掛かろうと地面を蹴った瞬間、その頭上から地面に向けて弾丸が飛来する。
肉体を貫通し地面に突き刺さるそれは、煙狼の動きを苦痛から鈍らせた。

『ガァウッ!!』

苦痛に耐えながらポチに対する噛み付きを強行する、しかしその行動はワンテンポ遅れ、動きは鈍い。
仮に毒が効いていたとしても、迎撃態勢を取る時間は十分に与えられている筈だ。
7狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/12(月)17:35:17 ID:mE8 [2/4回]
>>6
それは形状こそ獣の形を為しているが、魔法生物という神秘の生命体の例に漏れず、おおよそ奇怪な体構造を持つ。
寝食を不要とし、臓器の有無は疑わしく、呼吸さえもそれにとっては必ずしも必要な行為ではない。
即ち呼気を媒介する毒性はポチになんら脅威を与えるものではなく、しかし守るべき対象がいるとなると話は別。
煙の体が苦悶に呻いている間、しなやかな尾が流体めいて形を変え、扇を模した平面となって毒煙を上空に吹き散らす。

『――…………』

黒い獣が発声することはなく、けれど瞼と癒着しているように見える紫黒の双眸は鋭く狼を睥睨して敵意を示す。
頭を低く下げて迎撃の体勢、背後を鑑みる必要がある以上回避という選択肢はない。
正面から迎え撃つ刹那、急激に身を捩って鋭牙に横腹を差し出した。
真黒な体に牙が食いこんでもポチに表情の変化はなく到って平静、噛ませたままにずるりと胴が熱したガラスのように伸びて。
耳まで裂けて胴ごと咥えこみかねない口内に、歯列を無視して生えた数多の歯牙が、仕返しとばかりに横から食らいついた。

「……ふ、っ……!」

その後方、無傷であるはずなのに眉を歪め、苦しげな吐息を漏らす少女。
思わずして抑えていた脇腹は、今しがたポチが咬傷を受けた場所とほぼほぼ同位置であった。

//お待たせ致しました、ここから安定してお返しできます
8エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[sage] 投稿日:19/08/12(月)17:57:45 ID:WoR [1/1回]
この地に存在する"魔力溜まり"は他の各地の場所に比べても一段と濃い。故にこの地には様々な魔法生物が誘き出されてしまうのだろう。
魔力溜まりがあるということはこの地の龍脈は太く繋がりが強固なものである証。ここでなら――――

「…………」

複数ある龍脈の一つ、そこに彼女は訪れていた。龍脈の経路の真上であるそこには目印の大岩が佇んでいる。
要石の役割も果たしているこの場所を知っているのは少ない。魔法使いの中でも数限られている。

「…………まだ足りぬ、魔力が満ち満ちるにはまだ…」

制服姿であることから学生であるのであろうが、ただの学生がこんなところにいるとは思えない。
だが魔力も微塵も感じない、そう微塵もだ。それは逆に不自然にも感じるだろうか。

//起き&本格的な返信は夜からになりますがよろしければ……
9ヒルマン◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/12(月)21:18:38 ID:hlz [3/5回]
>>7

噛み付けばこれは良しと、より深く深く牙を食い込ませようとする。
しかし、黒い肉体は牙に纏わりつく様に、まるで肉を噛んでいる様な手応えが無い。
躍起になって、いっその事このまま噛み千切ってやろうかと。

『ギャウゥ!?』

そう思った矢先、胴に無数の牙が突き刺さる。
先程の弾丸による傷も合わせた強烈な痛みがその身を襲う、どうにか引き剥がそうとでたらめにのたうち回り始めた。

地面に突き刺さった魔力の弾丸は、衝突の衝撃で霧散し。
新しい弾丸を生成しながら、視線は黒い獣と煙狼の攻防に向けられる。

「(皮も毛も無い、出現の瞬間は液状に見えた……見た事が無い種類だ)
 ……ん?」

不意に起こった変化、苦痛からか表情を歪めた少女の姿に、攻防を迂回し少女の前に駆け寄って守る様に立つ。

「どうした、怪我か、無理はするな」

不愛想で端的。
右手上の魔力弾は、今度は球状に成形される。

「性質は『網』……あの黒いのに指示は飛ばせるか?
 飛ばせるなら煙狼を壁際に追いやる様に言ってくれ、捕縛して動きを封じる」

//申し訳ありません私が遅れました!ここからは返せます!
10狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/12(月)21:54:51 ID:mE8 [3/4回]
>>9
「んっ……大丈夫です、少し痛むだけですから……!」

事実、強く抑えているにも拘らず衣服が血で汚れている様子はない。夏の夜の暑さのせいだけではない脂汗が頬を伝った。
逆巻く魔力の球をぱっと一瞥、すぐさま大きく頷いて拿捕に異論はないと暗に語る。
唇を堪えるように強く引き結んで、口で指示を出そうとしないのは音を介さない伝達手段を有するからか。

肉と呼ぶにはゴムに近い触感、しかし力を込めるほどに牙が食いこむのは間違いない。
このまま咬力勝負に持ち込まれるか否かといったタイミングで、振り払うように離れたのは声無く方針を聞いたからだろう。
偏平だった尾を鋭く地面に打ち付けるや否や、二本に裂けたその形状は鞭のように細く長く移ろって空気を叩く。
四つ足を狙って幾度も振るいながら、壁の際へと追い詰めようと誘導する様は、さながら猛獣の調教のそれであった。
11ヒルマン◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/12(月)22:28:53 ID:hlz [4/5回]
>>10

「……脇腹、同じ個所だな、感覚が繋がっているのか」

弾丸を射出、再び青白い光が曲線を描き宙を舞う。
唸りながら後退る形で壁際まで追いやられた煙狼はそれに気付かない。

パン、と軽い破裂音を響かせて、球状の弾丸は網に姿を変えた。
破裂音に煙狼が視線を上向けても遅い、網はすぐにその身体に絡みつき、動きを封じる。

「……OK、確保、あとは魔法協会に突き出して終わりだ。
 君、体調はどうだ、毒を吸ってはいないか」

取り出した手袋で両手を覆い、視線を少女の方へと向けた。

「手伝わせて悪かったな、そっちの黒いのも……言葉は通じるのか?」
12狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/12(月)23:02:59 ID:mE8 [4/4回]
>>11
見慣れない術式に興味を抱くのは、子供の好奇心を抜きにしても魔法使いとしての本能に近い。
月に花開いた網が獣の体躯を搦めとるまでを、目を凝らしてじっと見つめていたが。
事が終わったと知れば気が抜けたのか、すっかり肩の力を抜いて長く長く息を吐いた。
しかし極限状態が過ぎ去れば残るのは、人通りのない深夜に見知らぬ男性と二人きりでいるという事実だけである。

「い、いえっ、全然!全然大丈夫ですっ!」
「……んうっ……」

明らかに緊張で上擦った声色。ぶんぶんと向けた両の手のひらを振り、肩を縮めて恐縮しきり。
下手に体に力を入れていたものだから、思い出したように苛んだ脇腹の痛みに小さく眉を顰めて唸る。

「ええと……こちらこそ、お邪魔してしまったみたいでごめんなさい!」
「ポチはその……あんまり人とは話さないんですけど、ちゃんとお話は聞いてますから。ほら、もう戻って」

ぺこり、と元気よく頭を下げれば低い位置で二箇所に結んだ髪がぴょこぴょこ跳ねる。
役目を終えたポチはというと先程まで見せていた変幻を全て収め、単なる狐の形を取って少女の隣に寄り添った。
黒瑪瑙の瞳で男をじっと見据え、ぱたりと一度だけ尾を振ったから、どうやら言葉は解しているらしい。
少女の呼びかけを受けてポチの輪郭が崩れたかと思えば、大まかな形はそのままに液状化の如く黒い揺らぎとなり。
止めないのであれば少女の首に提げた小さな竹筒へと、容積以上の黒が収まることになるだろう。
13ヒルマン◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/12(月)23:46:10 ID:hlz [5/5回]
>>12

ちょっとやそっとでは千切れない魔力の網。
雁字搦めで身動きを封じられた煙狼は、網の隙間からじわじわと煙を吐き出しながらもただ唸り続けるのみで。

一方で、煙は煙でも甘い香りの煙を微かに纏いながら、男は液状化するポチをじっと観察していた。

「……姿形は自在、面白い生態だ、無理矢理分類するならばスライムに近いか?」

ポチが竹筒へと帰還すれば、視線はそこから自然と少女の顔へと。

「何にせよ今日は助かった……礼を言う。
 俺の名はヒルマンだ、あとで『ポチ』にも、ヒルマンが礼を言っていたと伝えてくれ」

そして、冗談めかして笑みを浮かべる。
煙狼が藻掻く網の端を持ち上げて、傍の変哲の無いビルの裏口へ。
ドアノブに手をかけて、左へ二度、右へ三度捻り、ノックを一度、一瞬間を置いて更に二度……。

一歩距離を置く、ドアは一人でに開き、その向こうには只管に奥へ続く木の廊下があった。

「……協会、もう少し手順を簡略化してくれないものかな……」

//キリも良い頃合いですので、この辺りで〆で如何でしょうか!
14 : 狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/13(火)00:17:14 ID:yrg [1/1回]
>>13
意思を持つ粘ついた黒の液体が、ずるりずるりと竹筒に吸いこまれて消えるのに数秒もかからない。
月下の影で満たした竹筒は一切の気配を遮断しているのか、そこらの代物となんら変わらないようにしか見えず。

「違いますよ!スライムじゃなくて、ポチはポチです!」
「これでもずーっと昔から、つゆりの家を護ってくれているんですから!」

連綿と受け継がれてきた無二の存在を型に嵌めるのを是としないのは歴史の長さのせいだろう、子供っぽく唇を尖らせる。
その裏に潜むのは一家相伝に所以する時の重みの誇りだ、心なしかない胸を張っているようにも見えて。
身近な大人が吸っているところを見たことがない、イメージとは異なる甘やかな紫煙にすんと鼻を鳴らした。

「い、いえ!本当に、気にしないでください。つゆりの方が助けられちゃいましたし!」
「つゆりは、狐塚の所のつゆりです。ヒルマンさんも、お気をつけて!」

快活という言葉がよく当てはまる身振り手振りの数、ふた回り以上も年の離れた相手への緊張はそう簡単に解けるものではなく。
けれど人懐こそうな笑顔は取り繕ってはいない、幼さ故の素直さが如実に現れ出ていた。
どことなく変わった名乗り口上、閉じるドアを見送ってから、ようやく誰も見ていない路地に蹲った。

「……うう……ポチの馬鹿ぁ。夜のお出かけが駄目だからって、わざと噛まれるなんてぇ……」

//それではこちらからはこれで〆になります
//ロールありがとうございました、お疲れ様でした
15 : エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/13(火)22:51:52 ID:kTQ [1/1回]
>>8
//再募集です
16狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/14(水)16:50:58 ID:n6y [1/1回]
夏休みの公園は月曜から日曜まで、暇を持て余した子供がいない日はないと言っても過言ではない。
しかし太陽がぎらぎらと地表を睨めつけるその日だけは静かなもので、うら寂しい葉擦れだけが猛暑に不満を唱える。
その原因は内部にいる人間が、人払いの魔法を行使しているからに他ならない。
たった一つ、地面に描いた人影の主はべたりと尻もちをついて、血の気の失せた顔を引き攣らせていた。

「やだぁ……お願いだから、こっち来ないでよぉ……!!」

眦に涙を浮かべて凝視する先にあるのは、何の変哲もないカマキリの死体の。
腹を突き破って丸太ほどの胴で天を衝く、巨大なハリガネムシであった。
常識と物理法則の通用しない様相は、見る者が見れば魔法生物の類であると察するのは易い。
本来であれば騒ぎになる前に、その気性を見極めて然るべき方法で対処するべきなのだろうが。

「ううっ、気持ち悪い……」

第一発見者である狐塚つゆりは不幸にも、虫や線虫のような生き物が大の苦手であったから。
ハリガネムシのいまだ見えない末端がカマキリの腹から現れ出るのを、慄きながら涙目で見守って待つしかできず。
17織羽汀◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/14(水)19:36:32 ID:x39 [1/4回]
>>8

「ここ、一般人の立ち入りは出来ない筈なのですが」

やや低い女の声。
ガリガリと、岩が削れるような擦れる様な音。

「何かの不具合でしょうか。
 ……立ち入りが出来ているから、一般人では無いという考え方も出来ますね。
 どちら様でしょう、お嬢さん」

空間に罅を入れる様に、前触れなく少女の背後に出現した人一人が通れそうな程の『穴』。
その縁を跨ぐやいなや穴は跡形もなく消え失せて、執事服の女は事務的に少女に疑問を投げかける。

//遅くなりました、ではお願いします!
18エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/14(水)20:30:09 ID:9YD [1/4回]
>>17

唐突に掛けられた声にしかし彼女は動じない。
これくらいは想定内だ、こちらには"魔封じの鏡眼"もある。もっともそれでもバレないという保証はないのだが。

「…………最近日本に来たばかりで、右も左もまだわからないのだ。道に迷ってしまっただけだよ、私はただの学生だ」

こんなところで荒事を進んでする必要もない。適当に理由をでっちあげればいいし、ある程度それは事実でもある。日本に来たばかり、というところだけではあるものの。
振り向けば相手は執事服に身を包んでいた。魔法使いであることは間違いはないだろうが、相手の所属が分からない以上は下手に出ることはできない。

「それにしても、突然現れたから驚いた。まるで足音も聞こえなかった、本当に唐突で、こちらこそあなたが何者か疑わしいものだな?」

//こちらも遅れましたので…!よろしくお願いします!
19織羽汀◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/14(水)21:03:24 ID:x39 [2/4回]
>>18

「妙に大人びた子供ですね、その口調は漫画かアニメの影響でしょうか。
 一先ず人生の先達として、癖にならない内に普通の言葉使いを学ぶことをお勧めします。
 手っ取り早く離れましょうか、ここ、あまりいちゃいけない場所なんですよ」

肩を竦めて、一瞬両手を擦り合わせる。
また先程の音がして、背後にゆっくりと穴が開いた。

「失礼、ご挨拶が遅れました。
 魔法協会の者です、ご存じですか?
 魔法も協会もご存知が無ければ……規則ですので、きっとこのやり取りはすぐに完全に無駄になりますが」

『記憶消去の魔法』。
相手の数分間分の記憶を消し去る魔法は、主に魔法使い達が不足の事態により一般人に魔法を目撃された際に用いられる。
その存在はエドワルドも知っている筈だ。
20エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/14(水)21:15:57 ID:9YD [2/4回]
>>19

「ご忠告痛み入る、だが余計なお世話と言っておこう」

確認したいことは確認できた、この場から離れても問題はないだろう。
要石の一つを確認できたのだから。残りの要石たちは後回しでもいい、魔力が満ちていない今はエドワルドにとってはただの石ころに過ぎない。

「…そうか、なるほど」
「私も魔法の知識はある、まぁ魔力はからっきしで知識だけだがね。しかし魔法協会の者とは思わなんだ、もしやそれだけここには"大事"なものが眠っていたりして…な?」

魔法協会とは厄介だが……しかし想定内。これだけ魔力溜まりがあるのだ、魔法協会が跋扈していても不思議ではない。
悟られなければいいのだ、もしも悟られたとしてもその時は捩じ伏せればいい。力こそが魔法の本質だ、相手をねじ伏せ屈服させる。魔法など……本当に実にくだらない。
自分から全てを奪った魔法も人間も何もかもが嫌いだ、本当に何もかもが――――
21織羽汀◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/14(水)21:46:56 ID:x39 [3/4回]
>>20

「目立たない口調を身に着けた方が身のためです。
 人生目立つと面倒ですよ、色々と」

しかし相も変わらず余計なお世話は続く。
『地味で無難こそが最上です』等と呟きながら、穴の先はまた何処か別の路地の裏へと繋がった。

「さぁ、私はただの雑務係です。
 こんな魔法を使うものですから、便利にあっちこっち飛んで見回りをさせられてます。
 ここに跳んできたのも偶然の範疇ですよ、ささ、とっとと離れましょう」

言いながら背後を指差して、穴の向こうに行けと言うように。
22エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/14(水)22:09:18 ID:9YD [3/4回]
>>21

「余計なお世話と言っているだろう、これ以上のお節介は逆に迷惑だ」

他者を敬うような心得はない、そんなものは必要ない。
穴の先は路地裏らしき場所が見える。どうやら本当に行き来が自由らしい、かなり便利な魔法のようだ。逃走にも使えるしその気になれば攻撃にも応用は可能だろう。

「偶然……そうか、あぁそういうこともあるだろう」
「いや、私のことは気にしなくていい。これでも来た道は覚えている、帰ることには苦労はしない」

魔法協会の者の魔法を潜る、というのはやはり警戒してしまう。もしもこの魔法が何らかのマーキングのようなものができるとも限らない、用心に越したことはない。
それに要石は確認できたが、龍脈を辿ることはまだできていない。帰り道に龍脈に沿って行けばより正確に計画を立てられる。
そう言ってエドワルドは女性とすれ違うように歩いて行き穴の横をそのまま通り過ぎようとして。
23織羽汀◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/14(水)22:42:49 ID:x39 [4/4回]
>>22

「そういうの、日本では短気は損気って言うんですよ」

迷惑だと言われても悪びれもしない態度は、意図的に相手を煽っているのか、それとも無意識か。
どちらにせよ、ほんの僅かでも怒気を感じさせる少女の言葉に肩を竦め。

「迷子を送るのも雑務係の仕事ですので、遠慮せず。
 仕事は仕事で手を抜きたくないタイプでして」

少女が穴の横を通り過ぎようとした直後、また瞬時に両手を擦り合わせる。
もしもそのまま一歩を踏み出すのならば……。

「段差にお気をつけて」

足を置こうとした地点、背後の穴の消滅と入れ替わりに大地に開いた子供用サイズの小さな穴。
落差は然程でも無いが、その向こうに見える路地の地面に放り出されることになるかもしれない。
24エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/14(水)23:05:53 ID:9YD [4/4回]
>>23

「…………何の真似だ?これは」

一歩踏み出そうとするその直前で歩みは止まる。
地面にはぽっかりと穴が空いていて、その先には全く別の場所が続いている。このまま踏み出していれば間違いなく落ちていたことだろう。

「私は一人でいいと言った、君のその仕事とやらはただの魔法の知識だけがある人間へと構っていられる時間があるくらい暇な仕事なのか?」

何か勘付かれているのだろうか、まぁそれならそれで別に構わない。
向こうが次にどう出るか、それ次第で今後は変わる。

「もう一度言う、私は一人でいいと言ったんだ。それとも……私に何か、他に用があるのか?」
25織羽汀◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/15(木)00:03:19 ID:8GR [1/1回]
>>24

「仕事には手を抜きたくないと言いました。
 迷子を送るのも仕事の内だ、とも言いました、それだけです」

悪びれる事の無い態度はずっと変わらない。

「えぇまぁ……時間は無いですよ、そりゃあもう忙しいです、忙しいので今だって早く終わらせたいんです」

足元の穴は消える。
慇懃無礼、丁寧な言葉使い、その実相手に気を許している訳ではない。
その言葉の奥に潜んでいる確かな警戒心に、エドワルドは気付くだろうか。

「それとも、歩いて帰らないといけない理由でも?
 転送先の不安ならご安心を、大通り近くの路地に転送します、そう遠くない場所から人の声が聞こえる筈ですよ。
 私の身分をお疑いなら、身分証でもお見せしましょう」

今度は少女の足元では無く目の前に穴が現れた、前方、肩越しにじっと視線を向ける女の姿がある。
穴を通るなら女が言った通りに何事も無い、マーキング機能の様な物も感じられず、転送先は喧騒が耳に届く路地だ。
通らないならば……女の警戒心が形になるのが先か、少女が手を打つのが先か、どちらにせよ穏やかではない事になるだろうか。

//戦闘に突入して継続か、〆に向かうか……という感じにしました、どちらを選んでいただいても良いです!
//そして大変レスが遅れている身でこれを言うのは申し訳無いのですが、今日のところは一時凍結をお願いします……!
26 : エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/15(木)14:38:33 ID:F4A [1/1回]
>>25

「…………あぁ分かった、お山のお散歩が趣味なのだがそこまで言われては仕方がない。散歩はまた別の機会にするとしよう」

これ以上相手を逆撫でしても何も出ては来ないだろう。ひとまずは引いておく、また時が来るまでは時間があるのだ、焦る必要はない。

「優しく頼むぞ?私は魔力を持たぬ身、魔法使いでは無いのだから。ちょっとしたことで死んでしまうか弱い存在なのだからな」

鼻で笑ってそんな冗談を言えば、そのまま歩いて前方の穴へと入っていく。そうすれば女の言う通り何の変哲も無い路地へと出る。
どうやら本当にそのまま返したらしい、ひとまずはこの地に魔法協会の息がかかっていると分かっただけでも上々。

「では私は行くとしよう。またいつか……会うかもしれないな?」

最後に振り返れば不敵に笑い、そのまま彼女は喧騒の中へと消えていく。
その場には結局何も残らず、あるとするのなら彼女への不可解な違和感くらいだろうか。

//寝落ち申し訳ありません…こちらはこれで〆させていただきます、ロールありがとうございました!
27立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/15(木)21:46:15 ID:umV [1/2回]
偽りに満ちたこのセカイは、今日もまた何時ものように何も変わらず廻り続ける。

上を向けば異形のモノが空を舞い、何気ない雑踏の中に瞳を向ければ人畜無害な生物に化けた人智の及ばぬ怪物が何食わぬ顔で紛れ込んでいる。
だが皆はそれに気が付かない、その目で見たものが、その手で触れたものが、そのままの姿でそこに居ると思い込んでいるからだ。

私はいつも不思議に思っていた、身体からあんな嫌な匂いを発している生物が日常の中に紛れ込んでいるのかが。そして、何故それを皆は当たり前の様に受け入れているのだろうと考えていた。
私とその他大勢の間に生まれた認識の乖離とそれに対する疑問は、魔法使いとしての才覚があると後になって知る事によって漸く解けることとなる。
思えば必定だったのかも知れない。私が刃を手にして、世に蔓延る魑魅魍魎の数々を討つ存在となる事は。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「__________」

宙に踊った身体が地面に強かに叩き付けられるほんの僅かな時間の間に、鏡花は今まさにこの世に生を受けてから今に至るまでの人生を追体験していた。
極限にまで圧縮された主観時間の中で、死に瀕した身体が見せた幻影に鏡花は一瞬心を奪われる。ああ、これが走馬灯と言う奴か、と。
目まぐるしく現れては消える記憶のフラッシュバック、だがそれに浸れる程の余裕は彼女には無かった。

「がッ………!ぐ……っ………はッ………!」

消えかけた意識を無理矢理に叩き起したのは冷たく硬いコンクリートの味だった。
受け身を取ることすらもままならず、力の抜けた身体は何度もバウンドしてから漸く止まる。前腕で上体を起こして吐血で地面を汚してからやっと自分が弾き飛ばされた現実を脳が理解した。
苦悶に満ちた顔を持ち上げる、約十数メートル離れたその先には、見上げる程に大きな赤黒く丸い脂肪の塊に、取ってつけたような無数の手足が蠢く悍ましい異形の怪物が佇んでいた。

「(ああ………どうしましょう………この場を切り抜ける良い策が浮かびそうにありません………)」

鞘たる傘を引き抜いて、月下に晒すは紅き刃。白鞘の刀を逆手に掴んで突き立てるがどうにも四肢に力が籠もらない、片膝をつくのがやっとの有り様。
桜が散りばめられた和装は血に染まり、体の節々には痛々しく傷が残されて、寛雅なる彼女の顔は今や夥しい量の血で汚れていた。

ネオンの光に満ちた大通りの一角は人の消えた世界を体現しているかのよう。この場を支配していた喧騒も、溢れかるような人々も何もない、この固いコンクリートの上に存在しているのは、彼女と怪物の両者のみ。
人除けの魔法によって、魔力を持たない一般人は無意識のうちにこの場を避けるようになっている。ただ一つの例外があるとすれば、これを見破り己の意志で足を踏み入れる事の出来る魔法使いだ。

あるはずがない、そんな奇跡のような出来事、だが今の鏡花には縋らずには居られなかった

この舞台に立つに相応しき、第三者の登場に。



//かなりスローペースですが良ければどなたかっ
28狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/15(木)22:47:33 ID:PtH [1/1回]
>>27
往来にぽっかりと浮かんだ空白の領域を侵すのは、雑踏に影を落とす街灯の群と遥か彼方に漂う月明かりが齎す灯火だけ。
目を灼く赤と噎せこむほどの鉄の匂いに満ち満ちた空間はしかし、支配された無意識の集合によって衆目に晒されることはない。
足を踏み入れる者はおろか知覚できる人間ですらごく限られている、不可視断絶の非日常極まる空間の境界が、不意に揺らいだ。

「――――っ、ぅ……!」

人混みをかき分けて飛び出したのは、まだ年端もいかない少女だった。チノのカーゴパンツに半袖のパーカーを羽織った、どこにでもいそうなありふれた。
醜悪な異形に息を飲み、それから女に視線をやれば黒と金の瞳が動揺と狼狽に歪む。
強張る体、竦む足。血腥い風が濡羽に混じった一房のブロンドを揺らして。

「あのっ……大丈夫ですか!?」

けれどこの場に己の意思で乱入したのは、力を扶翼に使いたいという確かな目的のためであり、怖気づいている暇などない。
慌てて女に駆け寄って肩を貸そうとする最中、少女の首に提げた竹筒からどろりと零れる黒の流体。
明らかに物理法則を無視したそれは狐に近い獣の形を織り成して、二人を守るように異形へと立ち塞がった。
29立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/15(木)23:47:11 ID:umV [2/2回]
>>28
硬く閉じた瞼の向こう、この瞳が光を通す事はなくとも薄く引き伸ばした魔力が捉えた怪物の形は手に取るようにわかる。
軟体動物めいて手足の関節を無視した異様な動きは見た者の精神を萎縮させるに容易い、刀を握る鏡花の手に力が籠もる、それは果たして恐れか奮起か。
地に足を付け立ち上がる、普段の何気ない所作ですら今はそれに労する程困憊しきっていた。一度、たった一度だ、虚を突かれて触手の如く伸びた手足に捉えられただけでこの惨状、次は無い。

「…………!あ、なた………は………?
一体どう……やって………いえ、今はそれ………より、早くここを離れてください………ッ!」

意志が存在するかさえ怪しいソレ、もう一度凪げば軽く折れよう鏡花の身体に止めを刺さんとしていないのは疑問に思う所だが、少なくともこの場では良い方に働いたと言えた。

現世とこちらを隔てる様に存在する人除けの結界、それを引き裂いて中に足を運ぶ者がいた。
存在を感じ取り刹那の間、朧げだった気配に警戒の色を露わにするも、それがまだ幼き少女であると、彼女をなぞった魔力によって知れば自らの身体が軋むのも構わずに声を上げた。

「きけ……ん、です………、どうか私にかま……わず……」

畏怖の念に満つる貴女に体重を預け、立つのもやっとで紡ぐ言葉も絶え絶えだ。打つ手を失い、しかし次なる犠牲者を出してはならぬと言う考えから、自然と言の葉の節には自己犠牲を思わせる想いが含まれて。
しかし………そんな彼女の言葉を嘲笑うかのように事態は悪い方向へと進んでいく。
それまで沈黙を保っていた目の前の異形は、ざらついた肌から生える手足を引っ込ませれば、すぐさま現れた無数の小さな手が絡み合った巨大な触手が現れて二人と一匹を打ち砕かんと唸りを上げるだろう。
その速度、その大きさ、見た目に違わぬ途轍もない破壊力を内包していると知るのは然程難しくは無い筈だ。迎撃せんと貴女の肩を離れた鏡花だが、節々に走る痛みがそれを許さない。

受ける、避ける、いなす、どの選択を取るにしろ、一つ間違えれば彼女らに降り掛かるのは避けようのない死だ。果たして、貴女の反応はいかに。
30狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/16(金)00:34:54 ID:pNl [1/5回]
>>29
おおよそ冒涜の化身にも等しい肉の塊は、幼な精神を容易く揺さぶって恐怖と後退を想起させる。
しかし惑乱の萌芽をどうにか踏み潰してここに立てるのは、玉響の命の灯火を目の当たりにしてしまったからに他ならない。
隔絶の空間に踏み入ったのも、震える足を意地だけで無視して立ちはだかったのも。ただ偏に、誰かのために力を振るうのが血筋を継いだ責任であると。

「大丈夫です!絶対に、つゆりがなんとかしますから!!」

だから諦観に満ちているように聞こえた声を遮って、奮起の叫びに喉を震わせた。
大きな身長の差では預けられた体重を、どうにか体全体を使って支えるのが精一杯だけれども。
毅然としてまっすぐに異形を見据える眼差しに、安堵を与えたいがための嘘偽りは皆無。

「――――ポチ!!」

命令の意味を為さない、されどそれだけで十分過ぎる行動の合図。
ポチと呼ばれた黒の獣の尾がぬらりと伸びたかと思えば、二人を横へと突き飛ばして触手の矛先から逃す。
乱雑な助け方を予期していた少女は自らを下敷きにして、咄嗟に女を庇おうと。
落ちる神速の影の下に取り残されたポチは暴の鉄槌に触れるより早く、四つ足の俊敏を利用して前進と回避を同時に熟し。
生物の埒外の如く口腔から這い出た長い舌が鋭利な片刃の鞭めいた形状を象って、触手を両断せんと音を断った。
31立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/16(金)01:24:16 ID:bsW [1/3回]
>>30
ギリ………と奥の歯を鳴らす。それは己が身に走る痛みでも、たった一撃の元に打ち伏せられた悔しさでも、目の前で悍ましき姿を晒す怪物への恐れでも、ない。
見下ろせる程に小さな身体、一回り以上も離れた年端の行かぬ少女にこの戦いの行く末を委ねる事しかできない無力感と、人の命を預かるという何よりも辛い重責を背負わせている自分への腹立たしさからであった。

「くッ…………う………」

ならばせめて、奴へと一太刀浴びせる事が出来ればと、半ば怒気を孕んだ呻きを零して立ち上がらんとした時、それは唐突に鏡花の身体を打ち付けた。

鞭打を想起させる生物特有のしなやかな動きで持ってその場の全てを打ち砕かんと風を切った破槌、しかしそれが目的を果たす事はなく、獣によって手荒に突き飛ばされた大小2つの影は形を保ったままに崩れ落ちて。
貴女に伸し掛かる形となった鏡花はお陰で身体的ダメージは軽く済んだらしく、すぐさまざらついた地面に手を付けば彼女を気遣うだろう、この場に置いて最も憂慮されるべきは鏡花本人であろうに。

『アアアァァァァァァァ!!!!』

醜悪な化物と黒曜の獣は月下に踊る、地を穿った触手を引き抜き、横に振り抜いてすり潰さんとした所でやっと、あるべきはずの感覚と、手応えがないことに気が付く。
表面に生えた大きな1つ目で見やれば半分程から先があらぬ所で飛び跳ねていた、知覚してから訪れた痛みに、怪物は女の悲鳴の様な耳障りな音をあちこちに撒き散らして暴れ始める。

「苦しんで………いる………?」

閉じた瞼の中にある光を失った瞳はその光景を視覚で知らせる事はできないが、ソナーのように辺りに波及させた魔力の波から飛び込んでくる情報である程度の状況は推察できる。
貴女に差し伸べた手はそのままに小さな呟きを零した。

『オ"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア!!!』

身体の一部を失ったそれは悲鳴を上げて暴れ狂う、表皮のあちこちから伸びた細い無数の触手は所構わず周囲に破壊を撒き散らす。
その一部は当然、二人と獣へと差し向けられる。先程と比べ威力も速度も落ちた攻撃は満身創痍の鏡花でもなんとか切り落とす事を可能とした。
しかしそれは長くは持つまい、興奮し、注意力の散漫になった今であれば致命に足る一撃を叩き込む事も難しくは無いだろう、彼女らを庇うか、それとも決着を急ぐか、道は2つに1つ。


//ごめんなさい ちょっと時間が厳しいので、良ければ今日はここで凍結お願いしますっ
32狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/16(金)02:25:07 ID:pNl [2/5回]
>>31
共々に突き出されて体を打ちつけ、アスファルトと鮮血に濡れた柔らかな肢体に挟まれた少女。
見る限り今の雑な回避で彼女が然程痛手を負ったわけではないと、安堵に逃避しかけるのもほんの束の間。

「っ――――」

耳を劈く暴圧の悲鳴に想起した言いようのない悍ましさ、黙止に絡め取られて思わず言葉を失った。
差し出された手を強く握った指先が、気丈であろうとする心を裏切って微かに震える。
躊躇の足踏みを表したかのように、追撃に移ろうとした黒影の獣が敵を目前にした瞬き程度の静止。

「…………大丈夫」

ああ、けれど。自分よりもずっと傷ついている人が、痛みを厭わず庇ってくれているのだから。
その挺身に応えずに、どうして生まれもって得ることを定められた力を振るえようか。
常人には手の届かない世界に触れることができる者として、困っている人は助けると決めたというのに。

「大丈夫。行って、ポチ――!!」

小さな鼓舞の呟きは、斬り落とされた触手が路面に叩きつけられる音に容易くかき消される。
それでも決意の奔流は離れた従者に確かに届いて、命を達するための活力に変換される。
最も懸念すべき存在が女に守られているのはソレにも主を通して見えているが、いつまで保つかも不明瞭な硝子の壁であるのもまた。
であれば狙うは短期決戦より他にない、機敏を取り戻した黒狐の舌が巻き戻しのように縮んだかと思えば、厚みのある諸刃の形を成し。
舌先と柄頭が途切れれば、がちりと事もなげに咥えるのは黒曜の輝きを湛えた大剣。
重さを知らない駆け足は夜を裂いて接近を試み、遮二無二殴りつける触手達には最小限の回避だけ。
幾度か殴打を受けても怯むことなく散華の跳躍、重力でもって振り下ろす花弁舞風の唐竹割り。

//凍結了解しました、一先ずお疲れ様です
33立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/16(金)11:51:51 ID:pCp [1/1回]
>>32
鮮血に染まりし凶刃は、虚空を舞って悪辣の化身たるモノが繰り出す激閃をすんでの所で切り落とす。一陣の紅風が鎌首を1つ飛ばす度、走るのは尋常ならざる激痛、砕けた骨が、裂けた肉が、その痛みで持って"もうやめろ"と言外に叫びを上げていた。

「ハァッ……………………!」

絶え間なく続く猛攻のほんの僅かな間隙を縫って鏡花はより一層強く空気を吐き出した。それは残心めいて己が戦魂を繋ぐ鼓舞に等しきものだった。
だからどうした、一体それがなんだって言うんだ、痛いから、辛いから、そんなたかが肉体の痛みでこの指先に触れた震える手を手放して良いものなのか?
悪しき異形に立ち向かう、小さな勇者が見せた強さを無駄にして良いものなのか?
否!どうしてそんな愚かな事が出来ようか!

「_____________」

白鞘を逆手に構え、辿り着くは明鏡止水の境地!自らの体が生暖かな血で余す所を無くしても、決してこの腕を止めはしない!
斬、斬、斬!!!音を裂いて駆け抜けた刃を鏡花の体から滲み出た無数のカミソリの如き紅桜がなぞる、斬と裂の2段構え!
斬って割って落として潰す、その数二十を優に超した頃、耳を劈くけたたましい咆哮がこの空を切り裂いた!

幾重にも張り巡らせた触手はついぞ獣を討ち果たす事叶わなかったのだろう、黒い軌跡を宙に刻んだ獣は生暖かい怪物の表皮にピシリと一本の亀裂を縦に走らせて。
巨大な肉袋からは血と臓物が溢れ返り、むせる程の悪臭を当たりに撒き散らす!。
てらてらと血で塗れた手足が獣に巻き付かんとやおらに伸びる、ただ目の前の存在を粉砕すると言う至極単純な衝動から伸ばされた無数の手足は身じろぎ1つしなくとも、獣に辿り着く前に力尽きて落ちるだろうが。

「はぁっ………は……あ………
大………丈夫……ですか……?お怪我は………」

怪物の生命活動の停止を認めた鏡花は張り詰めた緊張の糸を漸く弛緩させて、重力の導くままに全身をまばらに血桜が彩るコンクリートの地面に満たした。
最早知覚魔法すら発動する余力も残っていない、目の見えない鏡花は赤く染まった手で何もない空間を探る、果たして無事で居てくれているだろうか。
暗がりに投げた言葉に対する返答でしか、貴女の現在を知る事ができぬ程に彼女は弱りきっていた。
34狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/16(金)14:45:41 ID:pNl [3/5回]
>>33
赤、紅、朱、緋。紺碧の月夜に降る血の雨は、最早誰が流したものかも分からない。
確かなのは路上を、彼女達を、獣を、空気さえも汚して体温の名残を叩きつけ、生命のとめどない流出を密やかに語っていることだけ。
醜悪な肉を切り開いて落ちた黒い流星は水風船の如くべしゃりと地面で弾け、影となって血溜まりに沈み最期の足掻きをやり過ごす。
幾度もの殴打を受けてなお、痛覚どころか感情すら存在するのかも疑わしい、憮然とした振舞いであったが。

「い、つ…………うぷっ……」

その皺寄せは全て少女に押し付けられる、女の後を追うようにしてぺたりとその場に座りこみ、じくじくと全身を苛む痛みに眉を寄せ。
生々しさが過ぎる肉の割腹にこみ上げた嗚咽を、手で口を覆ってどうにか食道の中途で堰き止める。
真っ赤に粘つく花畑に染まってしまった衣服に拘う余裕もなく、断末魔が駆け抜けた静寂の中でしばしの呆然。
いまだ瞼の裏にこびりついている悪夢の跡形に荒い息を吐きながら、投げかけられた声に鼓膜を刺激されてようやく我に返った。

「ぁ、ええと……つゆり……つゆりは、大丈夫です!」
「お姉さんのお陰で怪我もありません!……だからっ……」

無事であると見せかけようとして、それでも震える言葉尻は苦痛によるものではない。
身を呈して庇ってくれた彼女の灯火が、目の前で不安定に揺らいで今にも消えそうなのが何よりも恐ろしくて。
言いかけた激励の言葉に代わって励ますように、縋るように。虚空を彷徨う手を両手でしっかりと掴んで握りしめた。

「っ……今、病院に連れて行きますから!頑張ってください!ポチ、急いで!!」

悲鳴に近しい懇願の命と同時、二人の側まで戻ってきていた黒い影がむくりと起き上がって実体を取り戻す。
しかしその姿形は先までの地を駆ける獣ではなく、空を舞う鳥であった。人の背丈ほどのそれは、迅速に運ぶのに最も適した方法を模索した結果であり。
鋭い鉤爪は女を掴み取ろうと伸び、それが叶えばみるみるうちに変形して吊り担架を象り被運搬者への負荷を減らす。

「ここは任せてください!つゆりも後から行きます!」

大きく広げた濡羽の両翼が唸り、血腥の風を残して飛び立つ大きな鳥を見咎める者はいない。滅びの星を目指す夜鷹めいた一条の黒閃は、病院を目がけて流麗な弧を描く。
魔法使いによって運営され、その事情もよく知っている病院であり、その界隈では知る人も多いそこに、黒鳥は言葉もなく女を押し付けて処置を任せるのだろう。
35立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/16(金)18:02:12 ID:bsW [2/3回]
>>34
遠くから聞こえる夜空をも揺るがした今際の際の絶叫は、倦厭すべき悪魔の打倒を知らせるには十分だ。
暗闇に伸ばした片手に宿る暖かみと、時折強い動揺を覗かせた語り口で紡がれる貴女の言葉を聞いて鏡花は緩やかに口元を綻ばせる、この小さな手を握り返して微笑みの1つでも返してやれれば、ほんの僅かなれども安心させてあげる事が出来るのに。
嗚呼、けれど身体の芯から指先に至るまで、何一つ思うように動いてくれない。持ち上げられた彼女の腕をその場に留めていたのは、それを強く握った貴女の両手だけだった。

「あ………ぁ、それ……なら…………」

後に続くはずであった言の葉はしかし、唾液の混じった血液が呼吸を阻害してついに貴女の耳元に届く事はなく、真っ黒に塗り潰されつつある意識の中の呟きとなって鏡花の胸中に溶けて消える。
軈て血化粧を纏った彼女の肢体は、きっと抗う事なく貴女の従者たる獣の抱擁を受け入れるだろう、名残惜しむように指先を少し震わせて、しかしそれ以上の行動は叶わずに夜空に溶ける黒い影となった。
カラン………………季節外れの桜が周囲を彩る、紅色に染まった刀を残して。

この場を受け持って十数分も経てば、厳つい装備で固めた魔法使い達が慌ただしく結界の中に踏み込んで行くだろう。
警戒の後に危険が去ったことを知れば、軽い状況説明を求められるだろうが、それが済めばすぐさま自由の身だ、幸い痕跡の抹消とその他雑務は彼等が受け持ってくれるらしく、貴女の手を煩わせるものは何も無かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ここ………は…………」

着慣れぬ病衣の感触と暖かいベッド、そして鼻腔を刺激する薬品の香りとというシチュエーションは、目を覚まして早々に自身が置かれた状況を理解させるのには十分だった。

「あぁ………あの子が………」

懸命なる激励は無駄ではなかった、現世と冥界の狭間で揺蕩う彼女の魂をこちら側に繋ぎ止めた存在が居るとすれば、あの少女だろう。吹けば消し飛ぶ生命(いのち)の燈火を燃え上がらせたのは、間違いなく…………

「お礼を、言わなければなりませんね…………」

科学を超越した魔法医療の賜物か、身体を動かす事は未だ叶わぬものの、恐らく夜明けの光明であろう暖かな日差しに頬を緩める事が出来る程に彼女の容態は安定していて。

意識を手放す寸前に感じた、全身を包み込むような感覚はきっとあの子が従えていた存在によるものだろうと結論付けた鏡花は、誰に向けたわけでもない呟きを病室の中に木霊させた。
36狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/16(金)19:05:52 ID:pNl [4/5回]
>>35
目覚めた彼女をじっと見据えていたのは、黒瑪瑙の如き一対の双眸であった。
愛玩用の小鳥を模した冥闇色のそれは枕元で羽を休め、理知的な瞳でもってずっと静かに見守っていたのだろう。
静やかな言葉の意味を解しているのかは伺えないが、残響した音を合図としておもむろに翼を震わせ飛び立ち。
白い病院に黒の軌跡を描いて止まったのは、部屋の隅で見舞客用の丸椅子に座って微睡んでいる少女の肩。
包まっているブランケットは病院から借りたのか、布の切れ目から抱えた艶かしい紅を宿す刀身が覗く。
不意に口内までも黒い嘴が、少女の髪を咥えてぐいと勢いよく引っ張った。

「――――ひぁぁあぁあ!?」

転寝の揺籃から急激に突き落とされて、情けない悲鳴を伴い覚醒する意識。瞬時に全身の筋肉が緊張して、ぴょこんと弾かれるように立ち上がる。
目を白黒させながら室内を忙しなく見渡して、ベッドの上の篝火が再び燃え上がっているのを見て取れば、大袈裟なまでに愁眉を開いて息を吐いた。

「……よ、よかったぁ……このまま起きなかったら、どうしようって……」

不安と安堵の危うい天秤に思わず瞳いっぱいに溜めた涙を、零れる前に手の甲で拭う。
窓から射す暁光に金黒を細め、知らず溢れた笑みは感情の天秤が片方に振れたからに他ならない、不安を溶かした心底からの安堵の響き。

「あのっ、これ!あそこに落としてたので……」

涼やかな金属音がかたかたと鳴るのは、いまだ指先が震えを忘れられないからであるが。
その理由は恐怖でなく心の綻びによる弛緩のせいだ、血をさっぱり拭われた甚三紅の刀を差し出した。
37立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/16(金)20:45:06 ID:bsW [3/3回]
>>36
京美人を思わせる凛々しき顔立ちは、頭をかち割られたかのような鈍痛に歪められる。だが命があっただけで価千金と言えるだろう、忌々しいなどとは思わなかった。
右手の甲から伸びる点滴のチューブを思わず引き抜きそうになりながら、枕に頭を預けたままに散らばった黒糸をさらと撫ぜてまとめ上げる。ああ全く、片腕一本動かすので精一杯だ。

「…………ふあ………っ!」

きっとそんな事を思っていたからか、微睡みから転じて無理矢理に覚醒へと誘われた少女の声を耳にするまで第三者の存在を感じ取れずにいた鏡花もまた、水面に波及した漣の如く小さな驚起を表すのは必然であった。

「私も………覚悟しました」

たおやかとは言い難いその所作を咳払い一つで上書きするように糊塗して、それに感じていたほんの僅かな羞恥をおくびにも出さず鏡花は穏やかに言を連ねる。
この目は光を映すことができないから、誰かを真っ直ぐと見据える事ができないから、瞼を閉じたまま首だけを動かして声の聞こえる方向へと顔を向けて、口角を少し上げるだけの小さな微笑を貴女に手向ける。
それでほんの少しでも気持ちが和らいだのなら、これ以上の喜びは無い。

「ですが………貴女の"お友達"が………私をここに運んでくれたのでしょう?ありがとう、お陰で………私はまだこの世に1個の命として、生を紡ぐことができます」

堅苦しいと、思われてしまうだろうか。年端の行かない少女に対する語り口としては些か、いやかなり恭しいものだ。
けれどこの身が受けた恩に報いるにはこれでもなお足り無い、まさに鏡花の内面性を良く表した言動であった。

「なんとお礼を申し上げればいいか…………私の身を案じて頂いたばかりでなく、この刀をも届けて下さるなんて………………」

音のする方へ差し伸べた手の指先が触れたのは良く馴染んだ白木の感触だった。
屍山血河に取り残した分身にも等しきこれを拾い上げ、目を覚ますまで健気に待ち続けた少女の姿を思えば感謝の言葉を向けずにはいられなくなる。

「ああ………申し遅れました、私は立花 鏡花と申します、どうかよしなに」

自己紹介は、それが済んで漸く彼女が平静を取り戻してからだった。
あいにくと一礼出来る状態ではないが故に簡単に紡いだ言葉の後に、優しく穏やかな微笑みを纏わせた。
38狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/16(金)21:41:56 ID:pNl [5/5回]
>>37
真剣なんて触るのは初めてだったから、手渡す所作もどこかおそるおそるといった風で。
妖しく人を誘う桜の煌きが手元から離れてようやく、すべきことを全て成した心安に肩の力を抜いた。

「いえ、そのっ!つゆりは大した事はしてませんので……!」
「それよりもお姉さんが無事で、本当によかったです!」

それでもまだ言動がぎこちないのは、見知らぬ大人の女性と相対しているのも理由の一つであろうが。
端麗な微笑みから慇懃な言葉の選び方まで、おおよそ大和撫子然とした所作の一つ一つがまるで浮世離れの存在に思えて。
半身にも等しいのであろう刀身を侍らせれば、豊かな黒髪は薄紅の刃によく似合って幽玄さえ想起させる。
泡沫の幻想を眼前にした一種の畏れ多さとでも呼ぶべきか、上擦った声で突き出した手のひらをぶんぶんと振り。
知らず顔が熱くなっているのを、彼女に見られてしまわなくてよかったと心中で息をつく。

「つゆりは、狐塚の所のつゆりです!この子はポチって言います!」

元気な自己紹介もまた緊張の一環、少女の肩に止まったままちいと鳴いた黒い小鳥の方が泰然として冷静に見える始末。
泳ぐ視線、そわと落ち着かなさそうに身じろぎをすれば服を汚して酸化した血が控えめに乾いた音を立てた。

「あの……よければまた、お見舞いに来てもいいですか!?」
「ええと、つゆり、鏡花さんともっとお話したくて……いえっ、なんでもありません、忘れてくださいっ!」
39立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/17(土)00:15:24 ID:IIX [1/1回]
>>38
安堵、歓喜、様々な感情は小さな体で表すにはきっと大き過ぎるものだったのだろう、指の先までを余す事なく動かして表現する少女に向けられた表情はとても安らぎに満ちていた。
けれど何故だかとってもおかしくなって、矢継ぎ早に紡がれる少女の言葉のその裏で、時折くつと喉を鳴らせば莞爾に笑って二人の間に安寧を添える。

「とっても面白い人なのね?つゆりさんって」

鏡花もまた愉しげに言の葉を連ねる、顔を朱に染めた貴女の心中を知ってか知らずか、その語調は何処かからかっているようだ。

「つゆりさんも、ポチも、改めてお礼を言います。……………ありがとう、そしてよろしくお願いします
えぇ、まだ暫くは安静でいなければならないでしょうから、気が向けばいつでも………。遊んで差し上げる事は出来ませんが、あなたの話し相手位にはなれましょう」

忙しなく動くつゆりと、反して落ち着き払った貴女の友達に今一度感謝を述べれば、途中まで言いかけて、しかし曖昧に取り繕わんと放った言葉尻までをしっかりと聞き届けた鏡花は優しくそれを受け入れるだろう。

もしも貴女が望むのならば、普段の何気無い会話にも彩りを与えてみせましょう、そうして貴女が喜んでくれるのなら、私にとっても格別の喜びであるのだから。

そうして暫くの間は他愛のない言葉のやり取りが続くのだろうか。

空を茜色に染めた太陽が枕元の壁に立て掛けた紅色の刃を照らして白い病室に赤光を落とす。昨日は散々な1日の終わりであったがしかし、今日という1日の始まりはとても良いものであった。
閑麗たる佇まいで、年の離れた友人に微笑みかける鏡花の胸の内にあったのはそんな想いで溢れていた。


//お返し遅れてすみませんっ 自分の方からはこれで〆で如何でしょうか
お付き合いありがとうございました、お疲れ様ですー
40 : 狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/17(土)00:23:48 ID:XMA [1/1回]
>>39
//それではキリよく返していただいたのでこちらからも〆にしますね
//ロールありがとうございました、お疲れ様でした
41エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/17(土)12:38:53 ID:FUt [1/2回]
とある山の上に聳える小高い高台。そこからは比暮市の街並み全体を見渡せてどこに何があるのかなどもそこからならばはっきりとわかる。
ただ場所が場所な故に一般人はあまり立ち寄らず、立ち寄るとしても物好きや観光やらで試しに来るものがいるくらい。その上で人払いの結界を張っていればここを訪れる人物は限られる。

「…………この街の魔力溜まりはあらかた確認した……あと一つ、あと一つだというのにどこにある…」

ふと手を前へ翳せば周囲に様々な種類、そして凄まじい数の魔法陣や魔術式が浮かび上がる。
一見しただけではその内容を理解することはほぼ不可能で複雑に様々なものが繋がりあったもののようだ。

「理論は完璧…あとは実践のみなのだ……時を待って、待って、待ち続けた」
「我が"数百年"もの怨讐の具現、必ず為して見せようぞ…」

前に突き出し翳した手のひらをぐっと握る。そうすれば展開していた魔法陣やらは消えていきその場にはエドワルドだけが残る。
"魔封じの鏡眼"があるとはいえ、魔力溜まりの捜索や人払いを張るために多少魔法を使用した。自身の魔力の匂いは消せても魔法を発動した際のものはどうあっても消すのは難しい。
故にもしかすれば、この場に何者かが訪れると言うこともあるかもしれない。
42鳴神 泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/17(土)21:47:32 ID:xkB [1/2回]
>>41
「えっと…この辺りに魔力を感じたのかい?ドラゴン」

『そうだ!感じたことの無い膨大な魔力だ!
さっさと発生源を探し出さんか』

「はいはい」

側から見ればひとりで見えない何かと会話をしている
少年は常識的に見てやや危ない人と言う他ないだろう。
そんな少年が高台に向けて登ってくる。

「あちゃー…人だ、こりゃ先を越されたかもね」

『何!?』

ドラゴンを馬鹿にした様にひと笑いするとそのまま歩みを進め背後から声をかける。

「もしもーし、なんかさっきここで変な事があったり
してない?」
43 : 鳴神 泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/17(土)21:47:45 ID:xkB [2/2回]
//よろしくお願いします
44エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[sage] 投稿日:19/08/17(土)23:47:05 ID:FUt [2/2回]
>>42

「…………」

人払いもしてあるはずだ、だというのにここを訪れたということは何らかの結界等に抵抗力がある者か、もしくは別の何らかの力があるものか。
どちらにせよただの一般人というわけではないはずだ。

「変なこと、いいや生憎と何も心当たりはない。何か探し物でもしているのか」

勘付かれた?魔力を探知されたとでもいうのだろうか。周囲の魔力を探る、そうすれば奇妙なものが見えてきた。
目の前の少年から感じる魔力の反応が二つあるのだ。一つは少年のものだろう、人間はたとえ魔法が使えずともその身に僅かばかりの魔力は宿っているもの。
問題はもう一つだ。人のものとは違う強大な魔力。一人の人間に二つの魔力反応など本来ならばあり得ない。

//気づかず申し訳ありません…!よろしくお願いします…!
45鳴神 泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/18(日)16:43:34 ID:wwV [1/1回]
>>44
「探し物…そうだね、例えば魔法の力だったり…?
…なんちゃって」

『いいぞ、そのままこの小娘を探れ…!』

先程の魔力感知で見つけた発生源の位置は大体この辺り
だが近くに魔力を発した可能性のある者は目の前の少女のみ、だがその少女からも特別強い魔力は感じられない。
だがドラゴンとの契約で研ぎ澄まされた彼の本能が彼女には何かあると告げている。

//こちらこそ…!
46エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/18(日)23:33:59 ID:VOt [1/1回]
>>45

「――――不用心が過ぎるな?」

魔法。その単語を発した直後いつの間にか彼女の姿は消え、次に声が聞こえてきたのは少年の背後だ。
魔法による簡易的な空間転移。彼女から感じる魔力はほぼ無に等しい。だというのにこのような魔法を駆使できるというのは些か矛盾が過ぎている。

「何が目的だ?返答次第ではこの場で貴様を殺さねばならないが……私もそんな手荒な真似はしたくはない、素直に答えた方が賢明だと言っておこう。貴様の中のその得体の知れぬ魔力含めて、な?」

殺す、とは言っても今すぐにはしない。少年の中に感じるもう一つの魔力反応、それを確かめねばならない。
イレギュラーはギリギリまで排除せねば計画に支障を来しかねない。
入念に、執拗に、陰湿に。目的の為ならば手段は何も選ばない。

//またしても遅れて申し訳ありません…!
47現我奇跡◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/19(月)07:34:10 ID:bqS [1/4回]
>>46
「え…?」
『ぼーっとするな!後ろだ!』

一瞬状況が飲み込めなかった。
泪は彼女を疑ってこそいたが敵意を向けられるとは思っても居なかった、彼女が魔法使いなら同じ魔法使いとして友達になれるとさえ思っていた。

(え、得体の知れない魔力って…絶対君のこと言ってるよね?!)

『慌てるな!ここは下手に偽りを言うと危険だ、真実を話せ…』

(本当にいいのかい?)

心の中でのドラゴンとの問答は一瞬の出来事だった。
恐る恐る振り向き彼女と対面。

「目的?そうだなぁ…その前に僕の中に住んでる
もうひとりを紹介した方が良いかもね。
…コイツはドラゴン、封印されて死にかけだった所を僕の中に移して命を助けてやったのさ、今回ここに来たのはそのドラゴンを復活させて僕の中から追い出す為の
魔力を集めにって訳、コイツは魔力を食べるからね」

泪は冷静さを取り戻したのかハキハキと目的を語った。
よくよく考えてみると幾ら転移魔法が使えたとは言え
目の前の彼女からは大した魔力は感じられず自分には
ドラゴンがついているでは無いか。
と言う慢心も余裕を構成する要素の一つだろう。

「所でどうして君はそう、殺気立ってるの?」

『おい余り調子に乗るなよ?』

自分が答えたのだから君も答えろと言わんばかりに
48エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/19(月)08:13:54 ID:4aP [1/3回]
>>47

「……何かと思えば、旧時代に取り残された蜥蜴風情か。いや、この場合蜥蜴を通り越して寄生虫といったところか?」

ドラゴンといえば強大な魔力と魔法、そして知恵を行使することのできる言わば魔法生物の頂点。……だがここ現代にはその姿はほとんど確認されておらず、見つかったとしても小型の種ばかり。
故に大型のドラゴンというのは見つけただけでかなりの価値を持つ。

「――――私ならば、貴様のその目的果たすこともできようぞ?」

少年の問いには答えない。その代わり不敵に笑えば虚空に手をかざす。そうすればそこに現れるのはとある一つの"魔道書"
そして次の瞬間に彼女を一瞬炎が取り囲む。次に現れたその姿はまさに"魔法使い"と呼べるものだろう。その姿になれば当然"魔封じの鏡眼"は外されていて、同時に感じるのは一人の人間が持つには強大と言わざるを得ない魔力量だ。
当然だろう、この元々は魔力は彼女一人のものではない。魔道書によって吸い集められたものなのだから。

「この魔道書でその蜥蜴の魔力を吸い尽くしてやろう、そうなれば貴様の身体は貴様だけのものになる。なぁに一時は助けたとはいえ相手は蜥蜴風情、助けたのもただの気の迷いと切り捨てればいい」

蜥蜴風情などと言ってはいるもののドラゴンの魔力はやはり強大だ。それが弱っている状態だとしても手にすれば計画に大幅に近づく。
そんな、まるで悪魔のような取引に少年はどう応じるか。
49鳴神 泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/19(月)13:34:39 ID:bqS [2/4回]
>>48
「…だってさ」

『あの小娘…儂が自由なら骨も残さんぞ…』

偉大なる知恵と強大な力を持っていた魔法生物の頂点は確かに今や時代に取り残され生き急ぐただの一匹の獣に過ぎないのかも知れない。
ただその醜態を最も感じているのはドラゴン本人だ。
故にそこに触れられるとかなり刺さる。

「所で君は本当に何も…えぇ!?燃えた!?」

突然の出来事に驚きを隠せない、余裕を持った表情は
みるみるうちに驚愕で目を見開いたものに変化する。

「その姿やっぱり魔法使いか!」

『…やはりな』

驚きつつも想定内ではあった様で段々と落ち着きを取り戻す。
だがその最中彼女の提案は意外と言う他なかった。

「悪いけどその話は聞けないな…ドラゴンは僕が最初に助けようって決めた奴だからさ、僕1人の力で自由にしてあげたい、だから君の力を借りる訳にはいかないよ」

『……』

異常なレベルで増加した魔力を見せられて彼女がかなりヤバイ存在だという事はよく分かった。
正直めちゃくちゃ怖かったが自分の意志だけは曲げたくなかった。



50エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/19(月)18:07:47 ID:4aP [2/3回]
>>49

「そうか……それは残念だ――――なら死ね」

刹那、彼女が手を軽く翳せば可視化できるほどの白と黒の魔力がそれぞれ球状に浮かび上がる。
それは少年の目の前で生み出され、そして次の瞬間にそれらが互いに惹かれ合い、そして溶け合うように融合し……

「虚空に往ね『白と黒の共鳴(イレイズ・モノクローム)』」

溶け合い、そしてそれらは周囲の空間を飲み込んでいく。
物質だけでなく待機中の空気までもを飲み込みまさに文字通り消滅させる。少年が回避行動を取らなければそのまま虚空の中へと持っていかれかねない。

「そういえば先ほど何か聞いてきたな?冥土の土産に聞かせてやろう」
「――――私の目的は無価値な人類の抹消だ。そして価値ある人類を一から作り直す、この世界を作り直す」

//次の返信は23~0時ごろになりそうです…すいません…!
51鳴神 泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/19(月)21:04:36 ID:bqS [3/4回]
>>50
「分かってくれたんだね…って死ね?!」

『いかんッ!!!』

正体不明の攻撃、ひとつだけ分かることは…
触れたらマズイ!
泪が咄嗟にとった行動は回避だった、ドラゴンが魔力を一部解放すると泪の背部からは翼が生え大きく後方に飛び上がった。

「ッてー…無価値な人類の抹消?世界を作り直すだって?君は本当に何者なんだ、もう魔女と言うより魔王って感じだけど…」

着地に失敗し尻餅をつきつつ問いかける。
その声は恐怖に満ち震えていた。

//いえいえお構いなく
52エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[sage] 投稿日:19/08/19(月)23:12:44 ID:4aP [3/3回]
>>51

「……蜥蜴の分際で目障りな」

体内のドラゴンの力を少年の身体を通して行使できるということか。あり得ない話ではないが、しかしドラゴンというのは人間とはそもそもの存在が違う。
上位種、今でこそ見なくなったもののドラゴンの力というのはやはり眼を見張るものがある、そしてそれはとても人が扱えるようなものではないしドラゴンが人にその力を貸す、なんてこともほとんどない。
ドラゴンは基本人間などどうも思ってもいないし、餌とも思っていない。道端を歩く虫と同じだ。しかし目の前にあるのはドラゴンが人間を助けるという奇妙な関係であり。

「何百年と世界を視てきた。人間は無価値だ、存在価値など皆無に等しい。だから私が創り直す、このふざけた理不尽しかない世界を」
「その為に計画をしてきたのだ、私の計画に狂いはない。全ては緋色月蝕(エクリプス・スカー)に決まる」

そうして次に放たれるのは地面から吹き出す火柱だ。
それはまるで少年を取り囲もうとするかのように地面を這って近づいてくる。
空中に逃げても火柱という形を取っている故にある程度の高さまでならば登ってくるそれは翼という優位を一つ潰しにかかるものだろう。

//ただいま返信いたしました、ただ今日はここまでとなりそうです
//明日はある程度早くから返せますがもしもそちらの都合が悪ければ切っていただいても構いませんので……
53鳴神 泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/19(月)23:50:03 ID:bqS [4/4回]
「君が何を見たのかは知らないけど僕は人間が無価値だなんて思わない、そもそも誰であろうと無価値な存在なんてある筈ないだろ?勿論人間じゃなくてそれがトカゲでも、ね?」

『ふん、言うようになりおって…』

瞬間、ドラゴンの魔力が高まり出現させた翼で大きく羽ばたくと小規模の竜巻が発生し火柱へと向かう。
竜巻には多くのドラゴンの魔力が含まれている為あえて火柱にぶつける事でその威力を高めその上で支配権を奪おうと試みる。

//お気になさらず、こちらも時間がなかなか合わず申し訳ないです…
54 : 鳴神 泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/20(火)12:24:02 ID:dSY [1/3回]
>>52
安価忘れてました…申し訳ないです!
55エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/20(火)17:05:13 ID:WiS [1/2回]
>>53

「知ったようなことを……人間は等しく無価値だ。何れ死ぬその命、それまでにどれだけのことを成し遂げられる?死ぬ時には今まで生きてきたことそれら全ては無駄になる、無駄なのだよ全て」
「だからこそ一度全てをやり直す必要がある、私が人間をあるべきモノへと創り変える」

その口振りにはやはり一つの冗談なども感じられない。全て本気でこんな狂人じみたことを口走っているのだ。
冷たいその眼光は宙の少年見据えれば睨む、まるでそのまま射殺そうとでも言うかのように。

「――――まだ分からないか、例え蜥蜴の力であろうと届かぬッ!!」

炎と威力が増しより一層それは熱を持って荒れ狂う。元は彼女の魔力からそれは編み出されたものだ、心象を具現化したその炎を外部からの干渉によって上書きするというのは難しいだろう。
それは言わば彼女の心へと踏み込むということ、心象の中の紅蓮の炎渦へと飛び込むのはより高度な魔法とお互いの波長を合わせなければ不可能。
――――ただ乱すくらいのことはできる、その証拠にその炎は僅かに揺らめき陽炎を周囲に映す。

「ッ……この程度の小細工でッ!」

爆裂。その火柱が一瞬収縮したかと思えば次の瞬間に猛烈な爆風と熱を持って爆発したのだ。
僅かに揺らめきその支配下から歪めば再び舵を取るのは難しい。ならばいっそのこと壊してしまえばいいという単純な思考、だがそれ故にその威力は絶大だろう。
56鳴神 泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/20(火)18:11:58 ID:dSY [2/3回]
>>55
「死ねば全て無駄だって…?大事なのは結果じゃない
いずれ必ず訪れる死のその瞬間まで何をしてきたか…
その過程で人の価値は決まると僕は思うんだ…」

燃え盛る炎の中で彼の意思もまた激しく燃える。
火柱に施した小細工は結果としてこちらに牙を剥くこととなった。

「だから君と闘うんだけどコレは…!ヤバイって…!」

火柱が収縮した辺りで天高く飛翔し爆発をギリギリ回避する。

「こんな事になるなんて聞いてないよ!」

『ふん…儂が封印なんぞされていなければ…!』

「もうそれは良いって!」

爆発が晴れるのを待ち上空で待機。
57エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/20(火)23:12:39 ID:WiS [2/2回]
>>56

「……これ以上の話は無駄だな」

爆発による土煙が晴れたそこには無数の重なった魔法陣が展開され、そこにはかなりの魔力が集められている。
だがおかしいのが彼女自身の魔力に全くと言っていいほど底が見えないことだ。さきほどの魔法や今回のこの多重魔法陣然り、これらには当然かなりの魔力を使う。だというのに魔力が減ったような痕跡はない。それも当然だろう、その膨大な魔力の根源はこの街の人間。

「言っただろう、貴様らに勝ち目はない」

展開された魔法陣から放たれるのは単純な魔力のみで構成された魔力砲。さきほどは虚をつかれたもののこれならばどうしようもない。
ただ力任せにそれを放てば、そのまま大きく横薙ぎに薙ぎ払うことだろう。

//返信遅れてしまい本当すいません…!
58織羽汀◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/20(火)23:22:12 ID:CrF [1/1回]

魔法協会、その日本支部。
結界により守られた、何処にあるか分からない、外部から存在を確認することも出来ない不思議な建造物。
廊下の窓から外を覗くと、広々とした中庭とその向こうに見えるよく似た廊下。
協会内の何処の窓から外を覗いても、庭の広さに多少差がある程度で、広がっているのはよく似た風景だ。

そんな風景が覗く硝子窓に雑巾を押し当てて、執事服の上から割烹着という奇妙な姿の女性が一人。
せっせと硝子を擦り、上から下、サッシ、窓を開けてレール……と、丁寧に埃や汚れを拭き取っていく。

「……やはり、掃除は手作業に限りますね」

雑巾を傍らのバケツに突っ込み、水を絞るその表情は心なしか柔らかく、爽やかだ。
雑務係としての仕事の一環ではあるが織羽汀は、この掃除だけは心から楽しいと感じることが出来ていた。

「この微かな疲労感と、綺麗にしているという確かな実感……。
 魔法で掃除してしまってはこれも味わえませんから……フフフフフ……」

朝から晩まで途切れることなく様々な事案が集まり、それの整理と対応、各地の魔法使い達への連絡等に追われる魔法協会の業務。
その最中にあって、織羽汀にとってこの時間こそ、数少ない休憩時間の一部と言えた。
59鳴神 泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/20(火)23:58:33 ID:dSY [3/3回]
>>57
「アレを直でくらったら…」

『…恐らく死ぬだろうな』

今の自分にとって彼女は強大すぎる。
そう言うしか無かった、それ程までに彼女の魔力は桁違い、今持てる力を全て使って相殺できるかどうかと言った所だろうか、もしそれが成功したとしても彼女がこれで力を使い切るとは考えきれない。
一瞬のうちに巡らした思考はひとつの単純な結果にたどり着く。

「逃げよう、僕と交代だドラゴン」

『珍しいな、お前からアレをやろうとは…』

「この力は君の方が扱えるだろ?」

『元々儂の力だ、では行くぞ!』

空中で一回転すると竜巻が巻き起こり彼女へと放たれる
次の瞬間、泪の姿は手足に鱗が現れ、ツノや尾が生えた正に竜人とも言うべき姿に変わる。

「儂程の者が敵を目の前にして逃亡か…面白い世になったものだな」

『早くしてくれ!』

2人が行った事それは主人格の入れ替え、入れ替えによってより竜の力を扱えるようになったがこの形態にはひとつデメリットがある、泪の体に物凄く負担がかかるのだ

「では行くぞ!」

先程とは比べ物にならないスピードで空を駆ける、その姿は正に赤い流星といったところか。
目的は逃亡、全魔力を振り絞った逃亡である。

//こちらからは〆と言う事で!中々時間が合わず申し訳ないです…長時間ありがとうございました!
60 : エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/21(水)00:20:11 ID:ZIq [1/1回]
>>59

「ちぃ…」

あの速度で飛ばれては補足は難しい。それにここで大規模な戦闘をあまり長時間繰り広げれば魔法協会が駆けつける可能性がある。いや、恐らくもう気付いて動き出している頃か。

「……まぁ良い、あんな個人では止められはせん。所詮は路傍の石、私の計画に歪みはない」

ひとまずはこの場を離れることが最善だろう。
あと一つ、おおよそ世界でも最大規模の"魔力溜まり"がこの地にあるということは分かっている。あとはそれさえあれば――――
踵を返し、炎に包まれたと思えばその姿はもうそこには無かった。

//こちらこそ返信の時間が定まらず申し訳ありませんでした…!ロールありがとうございました!
61 : ◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/21(水)23:13:20 ID:zE2 [1/1回]
//>>16で再募集します
62エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/22(木)11:51:02 ID:it6 [1/4回]
>>16

――――それはあまりにも唐突な登場だった。
気付いた時には彼女はそのハリガネムシの目の前に立ち、そしてその大きく太い胴へと自らの左手を突き刺したのだ。
溢れ出る虫の体液は彼女の身体に何一つの汚れをつけることも叶わない、どうやら魔力による膜のようなものを張っているようでそれによって防がれていた。

「…………目障りだ、失せろ」

そして腕を引き抜けばハリガネムシを睨み付け、そのまま倒れるならば良し。まだ抵抗するというのなら更なる追撃を掛けることだろう。
街の調査……この街の魔力溜まりを調査しているときに偶然にもこのような現場に遭遇してしまった。産まれたばかりの魔法生物がいる、それはつまりこの地が魔力の濃い場所であるという証だ。
この街の魔力溜まり、その中心地…言わば魔力の最も濃い場所をずっと探しているというのに見つかりもしない。もしかしたらとここに駆けつけてみたが、やはり外れであり……

//本格的な返信は夕方頃からになりますがよろしければ…!
63狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/22(木)18:21:38 ID:q1B [1/4回]
>>62
ソレは雌伏の時を経て、ようやく全身に陽の光を浴びる歓喜に打ち震えていた。
いまだ全長が明らかにもなっていないにも拘らず、天を仰いでぬらぬらと光る胴を震わせる。
へたりこんでいる人間の女に興味など皆無。待ち望んでいた外界を自由気侭に這いずろうと、頭部を明後日の方向に擡げた瞬間。
曖昧な感触と、やや遅れた鋭い痛みがクチクラで覆われた肢体を貫いた。

「――ひえっ!?」

情けない悲鳴は少女のものだ、グロテスク耐性に劣る彼女には直視していられない光景だったようで。
突然の闖入者に目を白黒させながらも、やはり力の抜けた下半身では起き上がることもできず。
思わずぎゅうと目を瞑って、時折薄く瞼を持ち上げるばかり。首に提げた竹筒が、仄かに暗い魔力を帯びた。
頭部を砂に押しつけ、しかし絶命には至らなかったハリガネムシは尾部の端をカマキリの腹から引き抜くや否や。
怒りのままに丸太ほどの胴を横に薙ぎ、二つの人影を強く弾き飛ばそうと質量の暴力を叩きつけた。

英名では『Elephanthair worms』とも呼ばれるソレは、本来ならば水中を生活圏とする魔法生物であり、人に害することも滅多にない。
しかし今回のように陸上で寄生主から現れる場合、その大きさと薄い知性故に討伐対象に含まれる。
エドワルドがこの醜悪な生き物をどう処分しようと、咎める者はいないのだ。
64エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/22(木)19:55:25 ID:it6 [2/4回]
>>63

「(魔力…?)」

てっきりこの魔法生物が何らかの特殊な体質で人払いの魔法を使ったのだと思っていたが、これはあそこでへたり込んでいる少女が張ったものなのだろうか。
だがだとするならなぜあそこで蹲っているのか、自らで人払いをしたのならそれこそ退治か何か目的があるはずだが。

「虫風情が……」

胴による叩きつけはすんでのところで止まった。
見れば魔力による障壁が張られておりそれによってその一撃は阻まれている。
そしてその一撃を受け止めれば片手をハリガネムシへと翳し魔力を込める。そうすれば純粋な魔力の熱量がハリガネムシの身体を屠ろうと放出されるだろう。

//返信遅れて申し訳ありません…!
65狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/22(木)20:35:55 ID:q1B [2/4回]
>>64
肉塊の重量と速度だけに任せた、しかしそれだけに脅威となる一撃は二人を容易くへし折らんばかりの威力を秘める。
理性が存在するか怪しいソレは本能だけに従って動く、受け止められた苛立ちを胴体の脈動でもって示す。

「あわ、わわわ……あれ?」

動けない少女はというと腕を顔の前で交差させて、只管に狼狽の声を上げるばかりであったが。
轟音だけが耳に届けばすっかり気の抜けた呟き、首飾りに渦巻いた魔力は危機が去ったと見ても密度が衰えることはない。
ハリガネムシが焦燥に任せて頭を高く持ち上げたからだ、今度は上からぺしゃんこに叩き潰すべく。
破砕の鉄槌を垂直に落とそうとしたが、それよりも早く灼熱の魔力がその巨体を襲った。
高温の風、魔力が弾けて光の雨が降り注ぐ。身をくねらせて悶える影が長く伸びた。

「ふぁ……すごい……」

熱と光の奔流が収まって、そこに残されたのは腰を抜かしたまま誰にともなく呟いた感嘆の言葉。
それからすっかり焼け焦げて原型を留めていない、黒く煤けた細長い何か。
哀れな犠牲者たるカマキリの亡骸の周りを、細かな炭が彩っていた。
66エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/22(木)21:00:02 ID:it6 [3/4回]
>>65

「まったく…無駄手間だったな」

消し炭になったその魔法生物はおおよそもう死んでいるだろう。
その死骸の前に立てば、魔道書をその場に召喚する。死骸はまるで吸い込まれるように魔道書の1ページの中に魔力ごと消えて吸収される。
もしもつゆりが魔道具などへの知識が豊富ならば、その魔道書が一体どういうものなのか知っているだろうか。

「――――貴様、魔法使いだろう。この地に詳しいか」
「この地の一番大きい魔力溜まり、その場所を教えろ」

振り返れば問い掛けるのはさきほどからへたり込んでいた少女に向けて。
ここ最近は魔力溜まりの捜索に詰まっている、ならばここは一度調査の幅を広げた方がいいだろう。魔法協会に勘付かれるリスクは高まるが……こちらのことを完璧に暴けるはずがない。
計画は完璧、乱されることなどあるわけがないのだから。
67狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/22(木)21:38:52 ID:q1B [3/4回]
>>66
「あ、あのっ!助かりました、ありがとうございます!」
「つゆり、どうしても虫が苦手で……腰が抜けちゃって」

少女が我に返るのは、不気味な面相の一切が消え失せてやっとのこと。
人払いの結界を張るだけ張って動けなかった所在なさを、照れ臭そうな笑みで誤魔化した。
その天真爛漫な様子から、目の前の相手を疑っている気色は皆無でしかない。

「この辺の、ですか?ええと、つゆりは協会の人じゃないので、あんまり詳しくないんですけど……」

一つ一つ指を折り、時に記憶を手繰る仕草を見せて知る限りの魔力溜まりを教えてくれるはずだ。
しかしそのいずれもが最大級と呼ぶほどではない場所、エドワルドが調べた地点が含まれていてもおかしくはないだろう。
無論それは彼女が意図的に情報を隠しているからではなく。

「でもこの街の魔力溜まりは、同じくらいの大きさが多いので……ここが一番大きい!っていうのは、つゆりには分かんないです」

ぺこり、とさも申し訳なさそうに頭を下げる所作に欺瞞は見受けられない、誠意のあるものであった。
即ち最も大きな魔力溜まりは隠蔽されている可能性が高く、エドワルドならばその犯人を察するのも難くないだろうか。
68エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/22(木)23:18:01 ID:it6 [4/4回]
>>67

「……くだらん、そんなようではすぐに死ぬぞ」

人払いの結界を自分で張ったというのにあんな様子を見せていては、もしも今回が元々気性の荒い魔法生物であったならやられていてもおかしくない。
そうなってからでは遅い、人は死ぬときは本当に呆気なく死ぬのだから。

「…………やはり知らんか」

一般の魔法使いですら知り得ぬということはやはり、情報の秘匿が行われているということか。そしてその大元は恐らく魔法協会。
だとするのなら一筋縄ではいかないだろう。だが許容範囲内、隠されているのだとすれば暴けばいい。その為の力なのだから。

「世話をかけた」

これ以上は話しても無駄だろう、有益な情報が得られるとは思えない。
大規模な魔力溜まりのことを秘匿されているということが知れただけでも僥倖だ、ならば次は魔法協会を標的に進めていけばいい。
そうしてもしも引き止めなければ彼女はそのまま翻してその場を去って行ってしまうだろう。

//またも返信が遅れてしまい本当に申し訳ありません…!!
69狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/22(木)23:42:23 ID:q1B [4/4回]
>>68
ぐ、と言葉を詰まらせる。否定できる要素など何一つなかった。
実際に荒事を担当するのは彼女自身でないとはいえ、その心持ちはコンディションを大きく左右する。
しおらしく俯いて下唇を弱く噛めば、二つのおさげがふるりと揺れた。

「ご、ごめんなさいっ。お役に立てなかったみたいで……」

その悄然とした様子は何も強く咎められたからだけではない、望む答えを与えられなかった悔悟によるものだと謝意からもよく分かる。
つまるところ彼女はエドワルドに微塵の懐疑も抱いていない、心底から済まなさそうに肩を竦めるのがその証左。
やっと神経が通り始めた足をゆっくりと起こし、スカートの砂埃を払う。立ち去ろうとするのはその遅々とした動作の間か。

「あ、あのっ!つゆりは、狐塚の所のつゆりです!」

ぱっと顔を上げて、呼び止めるかのような大きな声。
その呼びかけに如何な反応を返そうと、構わず真摯の言葉は続く。

「何か困っているんだったら、つゆりにもお手伝いさせてください!」
「つゆりは、お姉さんが困ってるなら助けてあげたいんです!」

純粋に、正義感と責任感から去来する言の葉。
疑うでも、勘繰るでもなく。ただ人助けをしたい一心の。
それは些か危険なほどに、まだ疑うことを知らなかった。

//お気になさらず、ご自身のペースで大丈夫ですよ
70エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/23(金)00:09:04 ID:rVI [1/5回]
>>69

「……別にいい、元よりダメ元で聞いたことだ。それに分からないことが分かった、それだけでも十分だ」

なんだか調子が狂う。こちらは初対面だ、普通初対面でしかも魔法使いを相手にするのなら疑念や警戒心を抱くのが普通。
だというのに目の前の少女からはそんな感情は一切感じられない。これからばまだ敵意を向けられた方が理解できる、これだけのことでこちらにそこまで悔恨を抱かせるなんて全くもって分からない。

「――――」

そんな感情を私に向けるな。
私は弱くない、助けなんていらない。力を持っているのだから、もうあんな光景を二度と引き起こさない為に。その為にこの計画を遂行させる。
人を、苦しみから救う為に。

「……貴様が手伝うだと?寝言は寝てから言え、人を疑うということを知るべきだな」
「私の名はエドワルド・ファウム・ルインガルデ。私の目的は"現人類の抹消"だ。私は――――人類の"敵"だッ!!」

未だ残っている感情で叫ぶ。その姿はまるでムキになっている子供のようでいて、しかしその圧はそんな生易しいものでは断じてなかった。
なぜか胸がモヤモヤとして、そして苛々する。目の前の少女を見ていると虫酸が走って仕方がない。
無力なままでは何もできない、人は力があってこそ何かを成し遂げられる。
誰かに手伝ってもらって、助けてもらって?そんなことはあり得ない。自分は完璧だ、だからこそ誰かの助けなど必要はないと。
71狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/23(金)00:41:30 ID:JVS [1/4回]
>>70
叩きつけられる感情の発露を一身に受けて、黒と金の瞳を大きく見開いた。
それは確かに驚愕が生んだ表情であったがしかし、同時に孕んでいる感情は、敵意や恐怖とはまたかけ離れたもの。

「――――どうして」

吊り上がる眉。先程まで動けなかった彼女はどこへ行ったのか、震える声は狼狽のせいでは断じてない。
今まさに大股で詰め寄るべく、少女を突き動かしているのは紛れもない怒りであった。

「どうして、そんな事を言うんですか!?」

これまでで一番大きな声が木立を揺らす。言葉では追いつかない激情が上下する両肩に滲んだ。
励起する衝動に呼応するかのように逆巻いた魔力が首元の竹筒に集うも、今はまだそれだけ。
自衛と自制を訴える己の従者の声も耳に入らない。とにもかくにも、一言言ってやらなければつゆりの気が済まなかったのだ。

「力があるなら、力があるのに……!なんでそんなに酷い事をしようとするんですか!!」
「さっきつゆりを助けてくれたみたいに!その力を、誰かのために使おうとは思わないんですか!?」

現実を知らない箱庭の夢物語、挫折を経由したことのない子供の綺麗事にすぎない叫び。
しかしそれこそが狐塚つゆりの力の矛先を凛と定める指針に他ならず、揺らぐことのない絶対的な支柱なのだ。
一方的に距離を詰める。堰を切ったようにまくし立てたつゆりの荒い吐息が届くほどに。
射抜く視線は毅然とした、浅はかな疑問も稚い理想も本気であると裏付けるまっすぐなものであった。
72エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/23(金)08:19:30 ID:rVI [2/5回]
>>71
//寝落ちすいません…!!次返信できるのは23~0時頃になりそうです…もし待っていられなかったりしたら切っていただていても構いませんし平行も全然してもらって大丈夫ですので…
73 : 狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/23(金)08:52:46 ID:JVS [2/4回]
>>72
//了解しました、ゆっくり待っていますので無理なさらず
74エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/23(金)10:30:18 ID:rVI [3/5回]
>>71

「そう、力がある。だからこそ私がやるんだ。他の誰もが成し得なかったことを私がやる」
「人間というのは貧弱だ、弱いからこそ苦しみ弱いからこそ死ぬ。そんな万物の輪廻から解き放つ、その為に脆弱な現人類は不要だ」

現人類の抹消、そして新人類の確立。そんなものはもはや神の領域だ、一人の魔法使いがそんなことを成し遂げるなど前代未聞。
一生物の概念そのものに干渉するなどそれこそこの世界すべての人間の魔力で補って余りある膨大な魔力がなければならない。そんなものは流石に幾ら何でもエドワルドは持ち合わせてはいない。
だがその言葉に偽りは感じられない、その言葉は目の前の少女の訴えと同じように"本気"なのだ。

「何も知らぬお子様がそうやって夢を語るから人は死ぬ。原罪の苦しみから解き放つには現人類ではもはや不可能。理想郷には生贄が要る、これからの人類の為に今の人類に生贄になってもらう、ただそれだけの話だ」

「お前なりの言うのなら――――私は人類の為に人類を殺す」

そんな彼女の瞳を射抜く視線に映るのは確固とした憎悪だ。だがそれ以上に様々な感情が混濁していて、その深奥はまるで覗けない。
狐塚つゆりが挫折をしたことがない子供の綺麗事ならば、エドワルド・ファウム・ルインガルデは挫折しその全てを奪われた忌子だ。
人間を疎み、魔法を憎み――――それだというのに彼女の目指しているものはどうしても矛盾しているのだからどうしようもない。

「既に賽は投げられている。止めたくば私を殺せ、殺せるのならな」

//時間が出来たので返信しておきます……
//5時頃まではこうやってチマチマ返せるかもしれません…!
75狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/23(金)11:58:10 ID:JVS [3/4回]
>>74
「そんなのっ……!」

言葉がつっかえる。言語化が感情に追いつかなくて、首を横に振ることで否定を示す。
底のない怨嗟の瞳を見据えた黒と金の双眸が動揺に揺らぎ、戦慄を堪えるように小さく息を飲んだ。

「そんなの、おかしいです!だってそれじゃあ、今生きている人達は……!!」

それ以上は声にならなかった。代わりに動いたのは、先程から魔力の密度が高まっていた竹筒の中の存在。
黒い粘液めいたそれはべしゃりと地面に落ちるや否や、狐に近しい獣の形を象って威嚇の姿勢。
しかしそれだけだ、直接危害を与えようとはしない。絶対的な意思がそれを頑なに拒んでいるからだ。

「っ……殺すなんて、出来る訳ないじゃないですか……!」

視線を切って俯く。言葉尻が震えて、それでも一歩も退こうとしないだけ懸命に奮起していると言えた。
初めてなのだ、理知性に欠ける魔法生物ではなく人間が敵として眼前に現れるのは。
剰え殺さなければ止まらないなどと言われてしまえば、非情な判断を下すには彼女はまだ年も経験も足りなさすぎる。
だからまるで幼子が駄々を捏ねるように、いやいやと頭を左右に振ることしかできない。その程度でどうにかなるわけがないというのに。

「つゆり、つゆりは……皆を助けたくてっ……それは、エドワルドさんも同じなんです!」
76エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/23(金)13:07:02 ID:rVI [4/5回]
>>75

「いいか、世の中は取捨選択だ。要らないものは切り捨てなければ自分が切り捨てられる……ならば私は切り捨てる側に回る」

世界は何かを犠牲にしなければ成り立たない。例えば物、例えば時間、例えば――――人。
どろりと落ちたその粘液のようなものには魔力が含まれていた、使い魔か何かの一種なのだろう。こちらに対して威嚇のような行動を取る様は主人を慮ってのことか。

「ならば貴様は死ぬ。必要が迫った時に決断が下せなければそれは同時に死を意味する」
「私は決断したぞ、あのとき私は自分の意思で殺した。そうしなければ自分が死んでいたからだ」
「殺せない、なんてそんなものは甘えだ。自らで選択もできないそんな軟弱者には何も残せないッ!」

みんな、みんな死んだ。父も母も、友達も知り合いも。
その中で生き残った、生き残ってしまった。ならば、もう二度とあんなことが起きないように、世界を創り変える。そうしなければ報われない。
"死"こそが全ての元凶だ、"死"は何もかもを奪って、後には何も残さない。だからこそその元凶をこそを消し去ってやる。
人の輪廻を否定する、人の運命に抗ってやる――――この身体はその証拠だ。
"200年前"からずっと準備をしてきた。時が止まったこの身体で、ただひたすらそれだけを目指した。

「そんな綺麗事で片付けられるほど現実は甘くないッ!この世は理不尽だ、その理不尽が一度牙を向けばありとあらゆるものを奪われる」
「だから、奪われない為に私が創る。二度と失うことのないモノを」

全てのものを救う。そんなことはとうの昔に失敗している。
村のみんなが死んだあの日からそんな素敵な選択肢は無いのだと脳裏に刻まれている。
だから例えどれだけ殺そうとこの目的を果たすと決めた。一を殺し十を生かす、それしか道はないのだと。

「――――現人類の抹消、人類を永劫に死なぬ身体に創り変える、永劫の時の中に閉じ籠める。貴様ら現人類には、人であることを辞めてもらう」
77狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/23(金)16:16:14 ID:JVS [4/4回]
>>76
「だって……人を殺すのは悪い事だし……殺しちゃったら、エドワルドさんは助からないじゃないですか!」

倫理の壁は堅牢だ、日本国内でごく普通の生活を送っていればそこに穴が空くことは滅多にない。
つゆりもまたその例に漏れず、殺人を忌避し悪辣を倦厭する、普遍的な価値観の持ち主の一人。
その上に絵空事めいた正義感を行動力で塗り固めただけの、単なる学生にすぎないのだ。
だから突然人の命を天秤にかけるのを迫られたとしても、簡単にその答えが出せるわけもなく。

「それでもつゆりはっ……!誰も死んでしまわないように、守りたいんです……!」

ここまでくれば最早意地だ、絵空事を現実にしたいと言って聞かない分からず屋の。
目で見える範囲、手が届く距離の全てに力添えしたいだなんて、泡沫の理想でしかないと頭のどこかでは理解していたとしても。
怨恨の言霊に揺さぶられている今だからこそ迷ってしまわないように、それに縋らずにはいられない。

ああ、けれど。もしも彼女の語る言葉が現実になり得るならば。
死の軛から逃れた世界は、きっと誰も泣かずに済む優しい――。

『――そこまでだ』

割って入ったのは第三の声だった。少年のようで少女のようでもある、中性的と呼ぶに相応しい。
二人の間に身を滑りこませてつゆりの体を後方に押しやっている、紫黒の獣がその主のようだった。口元は動いていないが、間違いなく声はそこから響いている。
狼狽しながらもまだ何か言いたげなつゆりを一瞥して黙らせてから、黒曜よりも昏く無感動な瞳でエドワルドを凛と見据えた。

『双方、熱くなり過ぎだ。これはまだ甘い故、吾から言い聞かせておく。汝も少し頭を冷やした方が良い』
78 : エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/23(金)17:20:06 ID:rVI [5/5回]
>>77
//伝えていた通り次の返信は23~24時頃になります…!
申し訳ありませんが暫しお待ちください……!
79エドワルド◆</b></b>PrsZe3iqZk<b>[] 投稿日:19/08/24(土)00:31:01 ID:6gp [1/1回]
>>77

「元から助かる気など毛頭無い、救いなど求める気もない」

そも自分に助かる価値なんてありはしない、ただ目的のためだけに生きるのみ。その道の先に自分の居場所はきっとない、それでもいい。いや、むしろそれで良い。
死という概念が存在しない止まった世界、それこそ絵空事と言われても仕方がないものだ。だがやってみせる、その為の道筋はもう用意してある。

「誰も死なぬ世界など今のままでは不可能だ、だからこそ私はそこを目指す」
「その為ならば幾らでも殺してやろう、死屍累々の山わ築いてやろう――――」

そんなことを語る最中だった。
第三者の声、魔法協会の者かと一瞬身構えるがすぐにそれがさきほどの獣の形をしたものから発せられたものだとわかった。
ただの使い魔…とは思えない。魔法生物のようではあるがなんとも不気味なそれは警戒してしかるべきものだろう。

「……貴様の方がよっぽど主人のようだな。頭を冷やせ、などと言うが私は至って冷静だ」
「そこの甘ちゃんには言っておけ、覚悟のないものが理想を語るな、とな――――」

瞬間エドワルドの身体を炎が包み、その姿は炎の中へと消えその場から気配も完全に消え去った。残るのはさきほどの魔法生物の残骸に、地面に残った焼け跡くらいだろう。

//最初に言っていた時間から遅れてすいません…!こちらからはこれで〆となります…!
//ロールにお付き合いしていただき本当にありがとうございました!
80 : 狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/24(土)01:12:19 ID:H9H [1/1回]
>>79
「それじゃあ……そんなのって……」

情けは不要、止まる気は絶無。そうはっきりと言い切られてしまっては、絶句するより他にない。
どうあっても孤軍を貫くつもりの相手に、果たして無理矢理にでも手を差し伸べてしまってもいいのだろうか。
彼女にはまだ分からない。初めて気付き、考える必要のあることだった。
震撼する意思、根底の疑念が燻る決意は続く言葉を生み出せず。
黒き獣から伸びた尾に口を軽く叩かれて、怖気づいたように一歩下がるつゆり。

『ほう?吾には激しているように見えたがな……まあ良い』
『吾はこれに従うだけだが、この際だ。一つだけ忠告してやろう』

どこか尊大な口振りは生来のものなのだろう、深く注意されていると分かっていても平静の佇まいは崩れない。
表情はなく声は平坦、口すらも動かさない黒狐だったが、暗紫の眼差しだけが微かに鋭く細められた。

『――人は死を恐れるが、永遠に生きていられる程に強くも鈍くもない。努々忘れるな』

炎に巻かれた姿が消えるのはその捨て台詞の直後。ややあって公園に戻りつつある喧騒、人払いの結界が解けたのだ。

「………………ポチ」

悄然とした呟き。その意を解した従者が流体を経て小さなげっ歯類を形取り、主の肩に登る。
震える手でそっと撫でられる感覚を背中に受けながら、さてどう説くべきかとソレは密かに思案に暮れた。

//こちらこそお付き合いありがとうございました、お疲れ様でした
81立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/25(日)18:51:21 ID:cDC [1/3回]
>>58
暖かな日差しが差し込む建造物、荘厳なれどもしかしそれを取り囲んだ結界は不可視の障壁となりて衆目を欺き人目に晒されることはない。
キングスクロス駅の魔法のドアめいた小洒落た仕掛けは無いものの、鉄の大鳥が空を駆け、高度な文明が齎されたこの現代で魔法という存在はそれだけで人を惹きつけて止まないものだ。

不意に響いた歪な足音が、束の間の休息に安らぎを委ねた貴女の鼓膜を強く叩いた。
無機質な2つの音が大理石の床を叩けば廊下に響いて満ち行って。見ればそこには松葉杖と和傘を両手に不規則な足音を鳴らす20代半ば程の女性が目に付くことだろう。
桃色の桜を散りばめた着物と下駄で彩った和の装いは現代社会において希覯な存在である事は言うに及ばず。
けれど170を超す長身に背中に流した黒曜めいた美麗な黒糸、京美人を思わせる寛雅なる顔立ちとそれに相応しき気品の前には花鳥風月さえも色褪せよう。
しかしそんな鏡花の呈した表情は酷く暗澹に満ちていた。良く見れば両の瞼は固く閉じ、不安定な足音を刻むその所作も何処か探り探りと言った様相で。直感に長けた者でなくとも彼女が盲目である事を知るのは容易かろう。

「っ………!あ……………」

目の見えぬ者にとって見知らぬ場所を歩くという事は暗闇が支配した迷路を蝋燭無しで進むに等しき行為、故に壁伝いに道なりにゆこうと和傘を握る手を持ち上げるも存外に離れていたようで。
歩く事にすら苦心する傷付いた身体はズレた重心に引き摺られて傾く自身をを踏み止まらせるには些か無理があったらしい、重力の導きのままに鏡花は全身を強かに打ち付ける。

「つうっ………!」

苦悶に眉を顰めてしかし、誰に助けを求めるでも無く零したのは痛みを押し殺すような吐息だけ、立ち上がろうと掌を床に当てれば漸く握っていた筈の物がその手の中に無いことを知る。

カラン……………紅消鼠の和傘が貴女のつま先を叩いて。


//スローペースになりますがまだ募集していらっしゃれば是非ー!
82織羽汀◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/25(日)19:30:13 ID:Tef [1/3回]
>>81

杖が床を叩く硬い音に、窓を拭く手を止めてそちらを見る。
覚束ない足取りで、長い廊下をゆっくりと進む女性。
様子からその女性が視覚に何らかの障害を患っている事を把握するのは簡単だ。

「(この無駄に広い協会内を、杖を頼りにとは……苦労しますね)」

しかし、そうは思えども手を貸す訳ではなく、淡々と窓拭きを再開するのが織羽汀という女。
一度女性に向けた視線をすぐに窓の方へと戻し、水気を切った雑巾を窓に押し当てて。
不意に響いた嫌な物音に肩を僅かに跳ねさせて、嫌な予感に眉を顰めながら視線を物音の方へ向ける。
案の定だ、転倒したのであろう女性が地に伏せている姿と、彼女の手から離れた和傘が転がる様子が目に留まった。

「(……あぁ、もう……)」

爪先に傘が当たるコツリという感触に一度大きく溜息を吐いて、雑巾をバケツに突っ込み、傘を拾い上げ女性の元へ。

「……失礼、大丈夫ですか」

務めて声色は平静、和傘は傍らに置き、立ち上がろうとする女性に手を貸そうとする。

//ありがとうございます、よろしくお願いします!
83立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/25(日)20:22:49 ID:cDC [2/3回]
>>82
一寸先をも塗りつぶす暗黒は生来より慣れ親しんだ物、そこに不安も恐怖も何もない。だが悲しきかな、一般的な日常生活を送る上で彼女が持っているハンデと言うのは非常に大きい。
取り落とした愛用の和傘でさえも、音を頼りに空いた手をそこに差し伸ばして触れる事でしかその居場所を知る事はできないのだから。

「(一体どこに………)」

鏡花の胸中を啄む不安と焦燥、暗闇を探るも手に受けるのは大理石の床の硬い感触だけ。半身にも等しいモノが納められているというのに、それを手放してしまった自分の愚かさを呪う鏡花の顔色は暗い。

「はい………?あぁ………すみません」

不意に投げ掛けられる女性の平坦な声、それは倒れ伏した彼女を気遣うと言うには少しばかり配慮に欠けるモノであったがしかし、聖鈴を思わせる清らかな声色で持って応える鏡花にとってそれはは天より差し伸べられた蜘蛛の糸にも近しきものであったから。
胸に抱いていた焦りとは裏腹に、佳容に微笑を纏わせて欣幸を呈せば白蛇を思わせるしなやかな指を貴女の手の先に絡ませて。

「お手を煩わせてしまってすみません………、落とし物をしてしまいまして。」

その所作は緩やかに、そしてたおやかに、貴女に少なくない体重を預けてやおらに立ち上がれば謝罪の言葉と共に軽く一礼を添えるだろう。
松葉杖で体を支えて幾分か視点が低くなってもなお貴女に比肩する程の長身、重くは無かっただろうか。なんて、後になってから訪れたほんの少しの羞恥。

「あのう、ここの職員様でございましょうか………?でしたら少し、お尋ねしたい事が」
84織羽汀◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/25(日)21:25:03 ID:Tef [2/3回]
>>83

「お怪我はありませんね、その目以外に」

敬語ではあれど、チクリと零れた嫌味は言葉使いでは隠しきれない捻くれた性根がよく感じ取れる筈。
やや腰を落とした体勢から女性を引き起こし、その手が触れそうなところに傘を置く。

「落し物はこちらでしょうか……いえ、これも私の仕事の一つですので、問題はありません。
 ……確かに私は魔法協会の者です、本日はどのようなご用件でこちらに?」

事務的で、義務的で、機械の様に平坦な声。
掃除の時間を邪魔された恨みがじわじわと漏れる。

「魔法生物の捜索に仕事の斡旋から窓掃除まで……何なりとご用命を」
85立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/25(日)22:24:15 ID:cDC [3/3回]
>>84
いやに刺々しい言葉尻での歓迎を受けても尚、鏡花が湛えたる微笑みは不動のまま。貴女が手向けたそれは凡そ何らかのハンデを負った人間に対する言葉としては凡そ不適切であるものだ。
しかしそうであっても傷付き倒れた己に貴女は手を差し伸べてくれた、例えそれが良心から来るものでは無かったとしても、その事実には相違ない。
ならば貴女に感謝こそすれ、嫌厭すべき理由など一体どこにあろう。だから自分はただひたすらに、微笑みを返すだけ。
「ありがとうございます」そう言って立て掛けられた和傘を拾い上げる、洋傘と比べて一回り以上大きいとはいえどもそれはやけに重たかった事だろう。まあ、それに違和感を覚えて問うか問わぬかは貴女次第だが。

「ああ………それはよかった。
…………数日前に友人からある事を伝え聞きまして」

この建造物にて職務に従事する者であると知れば鏡花は安心すると同時、ほんの刹那の逡巡を交えてから穏やかに、何処か声を潜めるようにして言を連ねていく。

「魔法生物の討伐を受け持つ狩人を探しているとの事でした、真偽の程は分かりかねますが…………もしそれが本当であれば、詳しくお話をお聞きしたく………」

魔法生物、この街に多数存在する魔力溜まりに惹きつけられたこの世の理から外れた奇々怪々の異形の数々。多くは人に害をなさずにひっそりと生息しているものが殆であるが、時折力を付けた個体が暴れ出すことがあるという。
だが人には見えぬその魑魅魍魎を討ち果たせるという存在がいるとすれば同じく異質な力を操る事が出来る魔法使いだけ。
故にそれを制する力のある者達を集めていると鏡花は聞き及んでここに訪れたのだ。

足取りもあやふやな盲目の女が尋ねるには余りにも突飛な話、多忙なスケジュールの間隙を縫ってほんの僅かな休息に心を落ち着けていた貴女からすればきっと面倒な事だろう。
だがしかし、先程まで物腰柔らかな姿勢を貫いていた鏡花の顔は真剣そのもの、冷やかしでも冗談のつもりでもないのは火を見るよりも明らかだ。
86織羽汀◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/25(日)23:12:55 ID:Tef [3/3回]
>>85

和傘とは一般的に、軽さこそが売りであった筈だ。
その手にかかる重みは、和傘から連想されるそれよりも幾分か確りとしたもの。
何か特殊な細工でも施されているのかとほんの少し様子を見ながらも、しかし大人しく傘を彼女の手へ。

「ご友人も魔法使いですか。
 ……その身体で戦えるのでしょうか、とは聞きたいのですが」

心底面倒そうな溜息を一度、挟む。

「何分魔法生物関連の依頼はいつでも溢れています、討伐に限らず保護や観察、捜索等もありますので……正直手が足りないというのが事実です、では、こちらへ。
 あぁ……名前をお聞きしても宜しいですか?」

受付は長い廊下の先だ、先導する様に、彼女の手を引いて歩き出そうとして。
ふと、名前を聞く。

「名前を知っていた方が呼びやすくて楽ですので。
 私は魔法協会雑務係、織羽汀です、以後よろしくどうぞ」
87立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/26(月)00:06:48 ID:TPe [1/5回]
>>86
静寂を撹拌するかのように時たま微かに空気を震わせるのは金属の擦れ合う甲高い音、芯から末端までを余す事なく木材で仕立てて居るはずの和傘から聞こえるのは気のせいではない。
ともすれば、洞察力に秀でていれば柄からおよそ八寸と少しの所に繋ぎ合わせた様な痕跡が見受けられる事に気がつけるだろうか。
小さな金属音、白鞘を想起させる白木の柄、力を込めれば抜き放てよう異質な造り、それはまるで………中に何かが仕込まれているかのよう。

「ええ」

支えが無ければ歩く事すらままならぬ傷付いた己が身体は激しい戦闘に耐え得ることが出来るのかと言われればNoと言うより他にない。
だから紡いだ言の葉は短く簡潔に。貴女の問に対して子細に全てを語らずに、糊塗するように莞爾として笑えば黙して窓からの暖かな陽気に返答を委ねた。

「これは失礼を………わたくし、立花 鏡花(キョウカ)と申します どうかよしなに、織羽様」

傘と松葉杖を小脇に抱えれば、仄暖かな柔肌を軽く握り返すだけの抱擁で静かに受け入れて、引かれるままに歩みを進める。
道すがらの軽い自己紹介を大和撫子然とした振る舞いで簡単に済ませて、軈てカラカラと下駄が叩く音が廊下に伝播するだけの沈黙を裂くように口を開く。

「織羽様はどうしてこちらに?」

それは、長い長い歩みに飽いた鏡花のなんの気無しの質問で。白蓮で清廉な耳触りのいい声色はただ静かに貴女の鼓膜だけを優しく叩くだろう。
どうしてここで働いているのかなんて突然な問いは必要以上の言葉を発さない貴女にとっては過剰なコミュニケーションの強要と受け取られても仕方の無いことだ、もし不快を示せば鏡花は辿り着くまでの道中を口を噤んだままに進むだろうが。
88織羽汀◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/26(月)01:12:40 ID:wnB [1/4回]
>>87

「(成程、『仕込み』か)」

ほんの一瞬目を閉じて、導き出した結論を心中で呟く。

「……魔法協会は、貴方の命の保証までは致しかねます。
 我々が行うのはあくまで仕事の斡旋と補佐、それ以外の全ては自己責任で……。
 では行きましょう、立花さん」

とはいえ。
恐らくそう簡単には死なないのだろうと、『仕込み』使いの女性を横目で見て、そのままで歩き出す。
規則的な靴音が二人分。

「……どうしてここに、ですか、つまらない答えですよ。
 私は魔法を使えて、ここは給料が良かったんです、将来を見越してお金を貯めておきたかったもので。
 しかし……中々どうして仕事が多くて、給料の額に見合っているかというと微妙なところですね」

それは酷く俗物的な答えだ。
金と生活の安定が目的、崇高な志も何もない。
仕事の内容には不平不満を隠さずに、しかしあまりに淡々とした口調は感情の起伏に乏しい。

「時々羨ましくなりますよ。
 世の為だとか人の為だとか、ご立派な志を掲げて活動をする高名な魔法使い達の名を仕事柄よく聞きます。
 持て囃されて崇められて……対して私はただ少し夜魔の血を、魔法を使える血を引いていただけの一般人です」

自分の仕事に手は抜かない、それだけはポリシーだ。
その証拠に今だって、大好きな掃除を放り出してまでこうして道案内をしている。
それでも、時々自分がいかに『大したことのない存在なのか』を思い知らされるようで。
……嫌味、皮肉の一つ二つも言いたくなる。

「立花さんは……果たしてどちら側なのでしょうか」

自分の様な、大したことのない存在か。
或いは、おとぎ話の英雄の様な……そんな存在なのか。

//すいません遅れました、そして凍結をお願いします。
89立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/26(月)10:22:47 ID:TPe [2/5回]
>>88
「覚悟の上です」

心中に秘めたる決意は固く、例えそれが煉獄の釜の上に貼られたロープを命綱無しで渡るが如き所業と知っても臆することなど断じてない。
武運長久が戦場(いくさば)に生きる武人の常なる願いというのなら、私もそれに準じよう。畢竟、己の命運は手にした刃の導きのままに定められるものでしか無いのだから。

「…………………………」

けれどもまあ、何も目の前のほんの刹那だけを見つめて生きている訳でもない、私にも守りたいものの1つや2つくらいある、無為に死ぬつもりなど毛頭ない。
しかしそれを今言うのも野暮というもの、鏡花は滔々と言葉を並べ始めた貴女の声に恭しく耳を傾けながら、ただ穏やかに閑麗な顔立ちを口角を僅かに上げるだけの微笑で彩って。

「そう………ですね、自分で言うのもなんですが、今織羽様が思い浮かべた人達に比べればきっと私は取るに足らない人間なのでしょう」

高尚なる理念の元に、選ばれし者のみが行使する事を許された力を振るいその名を轟かす強き者達。だが私はそんな英傑と呼ばれるに足る彼らと比較すれば何でもないただの魔法使いの一人なのだろう。
それは自らを卑下しているようだがしかし「ですが」と続けた鏡花はそんな事をおくびにも出さずに話を続けて。

「"私は"彼等に比べて自分が劣っているなんてちっとも思いません、自分の価値を決めるのは自分自身です、他人からの評価や掲げた崇高な志によって定められるものではありません」

「故に私は……………そのどちらでもありません」

質問に対しての返答としては酷く曖昧だけれど、不器用な彼女はこうした胸の内に浮かんだ言葉をそのまま真っ直ぐ伝える事でしか貴女の言葉に応えることができなかった。
所詮独白めいたただの自分の考えの押し付けのようなものだ、だからくだらないと一蹴してしまわれても構わない。
後に続いた、鏡花のお節介も。


「……………織羽様、貴女は自分をとても蔑んでおいでですね」

ふと、脚を止めて。貴女に触れた掌に力が籠れば、自然と尾を引くように貴女も歩みを止めることになるだろうか。

「つまらなくて何がいけないのでしょう?貴女は自分の未来を案じ、それに備える事のできる怜悧な人ではありませんか
…………確かに、自分に無い物を持っている誰かを羨む事もあるかと思います、ですが、貴女だって他の誰かには無い良い物をお持ちでは無いのですか?」

その声色は転じてやや強い物なれど、それが貴女を責めていると言う風だと言えば断じて違う。自分を蔑む貴女に"それは違う"とただひたすら実直に訴え掛けて

「倒れた私に、貴女は手を差し伸べてくださいました。
……………それだけで私にとっては貴女は十分立派なお方です」

例えそれが優しさから来るものではなかったとしても、貴女が差し出した手を握った鏡花の心に暖かな灯火が宿ったのは変わらない事実。
そっともう一方の手も重ねれば何処か慈しむかのような面持ちで、紡いだ言の葉も何時しかとても穏やかに。松葉杖に身体を預けながらのその所作は、とてもぎこちない物であったが。



//お気になさらず、少し時間が出来たのでお返ししておきますねー!それと今日は夜にお返しするのは難しそうです!すみません!
90織羽汀◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/26(月)11:39:16 ID:wnB [2/4回]
>>89

盲目でありながら、危険に身を投げ出そうとするその姿は、織羽にとっては特別な物にしか見えなくて。
羨望と嫉妬と、己を卑下する感情、全てが完全に混ざり合えば黒一色のある種無感情だ。
黒の中に汚れを落としても、容易く隠してくれる。
平坦な声色は、感情を廃した、言動とは裏腹に人間味が薄いもの。

「(いえ、やはりきっと貴方はあちら側でしょうね)」
「物語の登場人物を演じるには、私はどうにも没個性が過ぎる、貴方は良い、確固として己を持って行動している」

己とは何なのか。
ただ協会の職員、雑務係として生涯を終えるのであろう自分と、己を持ち魔法生物を狩る立花との差は何処にあるのだろうか。
淡々と歩みを進める最中、不意にかかったブレーキに思わず転びかけて、しかし慌てて体勢を戻した。

「いきなり止まらないで下さい……転びますよ」

平坦な不平不満、しかし立花が歩き出さないのなら引き摺って行くわけにもいかない、歩みは止まる。
言葉に耳を傾けて思案する。
『自分にしか無い物』?

「……仕事でしたので」

そう、ただの仕事だ、何でも請け負うのが雑務係だ。
それにあのまま放っておいては、どんどん辺りに埃を撒き散らされていたかもしれない、だから自分の為でもある。
……ただの仕事の一環で、自分の為だ、それだけだと、これはある種の自己暗示なのか。
僅かに寄った眉間の皺は、きっと盲目の彼女には見えはしない。

「仕事には、手を抜かない主義です、それだけです」

かぶりを振って、再び立花の手を引こうとする。

//ありがとうございます、了解しました、では〆に向かった方が良いですかね……?
91立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/26(月)13:09:49 ID:TPe [3/5回]
>>90
「そう………………」

つとめて平然と、抑揚の少ない音色で連なる言葉は全て、相対している彼女が極端に人間性と言うモノを押し殺した人物であると想起させるには充分すぎる。
ああそれであるならば一体何故、貴女が紡いでいた言の葉の糸はあんなにも悲壮に満ちていたんだ、どうして織り成したそれは冷たかったんだ?
物悲しそうに影を落とせば滲み出る哀切を隠そうともせず楚々な顔立ちを憐憫にて染め上げる。

「失礼………少々お節介が過ぎたようですね」

上から目線の同情でも哀れみのつもりもない、ただただ貴女の中に埋もれた何かを掘り起こす事が出来たのなら、それはきっと僥倖と呼べたのだけれど。
でも私の想いが届く事がないというのなら、乾き切った貴女の心に手向けた私の言葉が広い砂漠にコップ1杯の水を垂らすに等しき行為でしかないのなら、それらは全て無意味な物に成り下がる。
ペコリと身体を倒せば嫌味のない所作にて礼を1つ差し出して無礼を詫びる。鏡花にはもう、貴女の何を見れば良いのかが分からなくなってしまっていた。

「いえ………もう結構です、お仕事の邪魔をしてしまいすみません。ここから先は……………私一人で」

この指先に宿った暖かみは本物、なら何故私は今それを手放そうとしているのだろう。確と両手で握った筈なのに、どうして…………

「(ああ、そうか……………)」

怖いのか。貴女を想って言った言葉の数々がただの押し付けで、ただの不遜な物言いでしかなかった事を理解してしまうのが。

「非礼をお許しください……………出過ぎた真似をしました」

先を歩もうとする貴女に触れた両手の力を抜けば自然とするりと抵抗無く抜け落ちて、それを不審に思って振り返った頃にはきっと、また深々と頭を下げる鏡花の姿が目に映るだろう。
固く閉じた瞼の向こうで形作られた表情を鏡花は知る事ができない、それがもし固く閉ざされた氷山を何時しか穿つ一条の亀裂であったとしても、彼女には………。


//そうですねー、では次かその次辺りでどうでしょうかっ
92織羽汀◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/26(月)14:16:21 ID:wnB [3/4回]
>>91

「(私はただの職員に過ぎない、舞台の主役でも、英雄でもない。
  協会に就職しても、就いた部署はただの便利屋。
  ……これが相応だ、人には分というものがある)」

喝采を浴びたくない訳が無い、称賛されたくない訳が無い、誰だって褒められたいし成功したい。
人の根幹はどうしたってそこにある訳で、それは織羽も同じである。
それでもなお、織羽は暗示の様に心中繰り返す。
それは、ある種の臆病風なのか。

「……」

するりと抜ける立花の手に、怪訝な眼差しを向けて。
まるで悪い事でもしたかの様に頭を垂れる姿には、ますます眉間の皺を深くする。

「……あぁ、もう」

一度面倒そうに頭を掻いて、抜け落ちた手を再び握りしめようとした。

「言った筈です、私は仕事に手を抜かない主義です。
 貴方をここに置いていくのはプライドが許しませんので、意地でも受付までは連れて行きますよ」

//では、次で〆ということで……!
93立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/26(月)21:11:18 ID:TPe [4/5回]
>>92
英雄だとか、普通だとか、誰かが勝手に自分の中に見た人間像に価値なんて無い、有りはしない。そんなのはただの虚像だ。
人を真に英雄足らしめるのはそうあろうと言う人の在り方だから、自分の限界を自分で決めてしまっては、それ以上前に進むなんて出来やしない。

「(ああですが…………私にはそれを伝えて差し上げるのは難しいようです)」

けれど貴女は立ち止まってしまった、導くだなんて上から目線で分かったような口を利くつもりなんて毛頭ない、だけどほんの少しだけ、暗澹とした貴女の心の中に光を灯せたのなら良かったのだけど。

「ええ………分かりました」

一度放したこの手が再び貴女の手中に収まって、静寂が支配したこの廊下をもう一度2つの足音が掻き乱してからも鏡花は暫く口を噤んだままだ。
心なしか貴方の手を握る鏡花の手に籠もった力が強くなる、なんて言葉を掛けたらいいのか分からなかったから、それを曖昧に糊塗するように強く、強く…………。
それが何の意味もなさないかもしれない事は分かってる、でも私には、差し出された温かみに甘えるより他になかった。

「…………………いつか、分かってくれる日が来る事を願っています」

長い歩みの果に、目的地を目の前にして鳥の囀り程度の小さな呟き、それが貴女に届くか否かは定かでは無いけれど。
ただの独白に見せかけた言葉を零すことでしか二人の間に生まれた沈黙を壊す事の出来ない自分を自嘲した。

//遅れてすみません!では次の織羽さんのレスで〆て頂いてもよろしいでしょうかっ
94織羽汀◆</b></b>ARTs7Q6pII<b>[] 投稿日:19/08/26(月)22:06:45 ID:wnB [4/4回]
>>93

普段から無駄に長いと悪態の対象である協会の廊下が、今日は更に長く感じる。
居心地の悪い静寂と、何処となく纏わりつく違和感。
次いで零れた立花の言葉に、今日何度目かの小さな溜息。

「……分かる日、来るでしょうか」

相変わらず平坦で、感情も何も無い。
ただ『否定では無かった』、たったそれだけの変化だ。
強く握られた掌に、怠そうに緩く力を込めて。


魔法協会の受付は、カウンターを挟んで椅子が並ぶ、市役所だとか銀行だとかの行政機関のそれに近く。
辿り着けば、きっと織羽は立花に席に座る様促す。
そこには既に、『ただの職員』としての姿があって。

「では仕事の話ですが。
 その様子では資料に目を通すことは難しいと思いますので、口頭で説明させていただきます」

マニュアル的な言葉の羅列。
黙々と淡々と、その日も『仕事』が始まる。

//これで〆でどうでしょうか……!
95◆</b></b>MwoOgjEJkw<b>[] 投稿日:19/08/26(月)22:08:15 ID:dkl [1/3回]
その道を猫が歩いていた。
どの品種ともつかない、そして野良猫にしては見慣れない毛色をした猫であった。

猫は人目を憚るようにその場を通り過ぎ、辻のあたりで何やら警戒するような素振りを見せた後、
二本足で、歩き始めた。

嘗て商店街であったであろう、今は活気の影も無い、消えかけた店の看板ばかりが並ぶ陰気な通りに猫は入っていった。
猫はある店の前で姿を消す。草書体に近い字で蒐集異物屋と書いてある。
古い木造家屋の店先から覗く店内は薄暗く、見るからに胡散臭さが漂っている。

店の中に陳列してあるそれは奇妙な造形をした骨董品かも定かではないものばかりだ。

奥の番台らしきスペースで少し長めの髪を垂らした青年が化石のような年式のテレビを眺めている。
貧相な電球は妙に赤茶けた色合いで彼を照らしている。

曇天は色を濃くしていき、アスファルトにぽつぽつと染みが出来てから、辺りが土砂降りの豪雨になるまで数十秒と掛からなかった。
96 : 立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/08/26(月)22:24:28 ID:TPe [5/5回]
>>94
//はい!ありがとうございます!お付き合いありがとうございました、お疲れ様ですー!
97鳴神 泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/26(月)23:00:29 ID:C1N [1/2回]
>>95
「なんだあの猫…」

偶々近くのコンビニに行こうとしていた所、見慣れないものを見つけてしまった。
この男、鳴神泪はそう言った見慣れないものに対して
強い好奇心を抱くタチなのだ。
当然跡をつける。

「げっ、た、立った!?」

気付かれぬよう忍び足。
今はドラゴンが眠っている為寄り道をしても何も言われないのだ。

「へぇーこんな場所があったのか……え?消えた!?」

この陰気な通りは初めて目を通す場所であった。
目新しさに視線を散らし尾行が頭から抜け落ちかけていたその時だった。
猫が消え、雨が降る。

「マジか傘持ってきて無いのに…!」

丁度猫が消えたその店に飛び込む様に入る。
服はどうやらかなり濡れてしまったらしい。

「すいません、ここ傘とか売ってます…?」

息を上げながら店員らしき青年に声をかける。

//よろしくお願いします
98◆</b></b>MwoOgjEJkw<b>[] 投稿日:19/08/26(月)23:19:06 ID:dkl [2/3回]
>>97

ロン毛の青年は突然の雷雨とともに入ってきた来客に目を細め、そいつを冷めた目線で睨む。

「……お客さん、ここが何だか知ってるのかい」

にやりと不敵な笑みを浮かべた彼はその鋭い切れ長の目を、珍妙な模様の大きな壺に、無造作に入れられた番傘へと向ける。
傘と言えば傘だが、それが地面を穿つ雨粒に耐えられるかは未知数の見た目をしていた。

「ほら、そこにあるだろう、化石級の逸品だ、試したいなら使っていいよ」

テレビは謎の番組を流し続けている。雨粒がガラス戸を叩きつけ、店内には奇妙な静寂が流れる。
その少し埃をかぶった傘を開こうとしてみれば、中から数匹のコウモリが飛び出てくるはずだ。

そのけたたましい動物は店内を駆け巡った後で、何事もなかったかのように元の鞘へと収まるだろう。

「千円。値切りは無しでね」

//よろしくお願いします
99鳴神 泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/26(月)23:29:42 ID:C1N [2/2回]
>>98
「はは…正直分かんないっス」

苦笑いでキョロキョロと店内を見回すと泪には訳の分からないものばかり、大慌てで入ってきた事による羞恥心と入る店を間違えたので複雑な感情。

「化石級…まぁ傘は傘だし」

心配はあるが形は傘だ、使えないことも無いだろうと
壺から一本を取り出し手で叩いて埃を落とすと傘を開く

「うわッ!?」

飛び出したコウモリに驚き傘を手放してしまう。
コウモリが傘に戻り落ち着きを取り戻すと申し訳無さそうに傘を拾い青年を睨みつけながら。

「ここはパーティーグッズ屋か何かで?」
100◆</b></b>MwoOgjEJkw<b>[] 投稿日:19/08/26(月)23:50:34 ID:dkl [3/3回]
>>99

「くははははは、ここに初めて来る客は皆面白いように引っかかるんだ」

快活な笑い声と共にコウモリの暴れる様をただ見物する青年。
傘を拾い上げた奴の狼狽えをひとしきり楽しんだ後、やはり謎の番組に目を配せながら質問にはこう答える。

「そうだな、近いものではあるかもしれん」
「そいつは「蝙蝠傘」だ。明治の初めに伝聞で広まった物を勘違いした何処かの阿呆が作り出した魔導の品だよ」

笑いを抑えた後、彼はその傘を指刺してその詳細を語る。

「千江。雨に降られた客が来た。止むまで茶でも出してやってくれたまえ」
「言われずとも」

まだ年端もいかない少女が店の奥から出てきて、古い机の品の上に紅い茶を出す。
その髪色が、どこか先ほどの猫の毛並みに似ているような気がした。
101鳴神 泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/27(火)00:08:57 ID:Eyc [1/4回]
>>100
「僕はまんまとその洗礼を受けた訳か」

笑う青年とは対照的にむすっとした顔でジーッと見つめながら傘を壺に戻す。

「おかしいと思ったらやっぱり魔法が関係してたんですね…」

薄々感じていた予感は的中していた。
彼もまた日常に魔法が付いて回る人間なので別に驚きはしなかった。

「まんまじゃないスか」

ネーミングにはやや呆れ気味。

「え、良いんですかそんな………これは何も仕込んでないんですよね…?」

青年の厚意に表情の険しさも削がれるが疑いは捨てきれず、茶を出した少女に軽く礼を言うと忘れかけていたあの猫の記憶がふと蘇る。

「…あの娘もしかして、あの猫?」

独り言の様な音量で呟く、だが静かな店内である為その声は2人にも届いているかも知れない。
102◆</b></b>MwoOgjEJkw<b>[] 投稿日:19/08/27(火)00:22:35 ID:pc1 [1/4回]
>>101

「心配はしていなかったけど、気まぐれでも一般人が入ってきてたらその番傘で叩き出してる所だったさ」

青年は番台から古そうな台帳を開いてペラペラとめくっていく。

「その魔法というフレーズが自然と出てくるなら話は早いよ。ここは魔道具屋だ。
調達したい物があるなら聞こう、お眼鏡に適うかは知らんが、この辺じゃ貴重なセーフハウスなんだ」

思い出したように台帳に色々と記帳していく青年をよそに、少女は男をじーっとにらみ続けている。

「……私のものは飲めないとおっしゃりやがりますか」

むすっとした顔でじとっとした目線を寄せる少女。
不自然なほど紅いそれ、おそらくはジャムでも入れてあるのかもしれない茶。
飲めば甘酸っぱく、そして口の中に毛玉が入ってくるだろう。

雨の勢いはすぐ弱まっていったが、まだ外はびしょ濡れの様相であった。
103鳴神 泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/27(火)17:41:27 ID:Eyc [2/4回]
>>102
「やっぱり魔道具屋なんですね!一度行ってみたいと思ってたんですよ」

魔法生物を退治する過程で知り合った魔法使いから度々魔道具や魔道具を売る店の話は聞いていた。
偶然とは言え気になっていた場所に辿り着くことができたのでテンションも上がると言うものだ。

「え?…あ、あー、ごめんごめん!そんなつもりじゃないんだよ!?ちゃんと飲むから!」

店内を見回ろうとした瞬間少女の声と目線が歩みを止めさせた。
飲むとは言ったものの見たことのない飲み物、先程も経験した通り何があるのか分からない為飲むのにも覚悟が必要になる。

「……よし!」

茶を見つめ、唾を飲み込み、覚悟を決め一気に飲む。

「…うげぇ…」

液体が下に触れた瞬間、ファーストコンタクトは意外にも良好、味は泪の好みであった。
しかし安心しかけたその瞬間、明らかな異物が口内に入り込む。

「またやってくれましたね…」

毛玉を咳と共に床に吐き出すと恨めしそうに2人を見つめる。

//寝落ち申し訳ありません!

104◆</b></b>MwoOgjEJkw<b>[] 投稿日:19/08/27(火)18:30:50 ID:pc1 [2/4回]
>>103

「出涸らしみたいなもんさ、魔力も採れるしな」

垂れ髪の青年も同じものを平然と飲む。
茶葉ではなく、何かの体毛を煎じて紅い魔力を染み出させたものであるらしい。

「それは"時速150kmで低空飛行できる箒"、そっちは"何かの代償と引き換えに食べ物を生み出す悪魔の籠"。」
「そいつは……ええと"石ころ属性"の魔法石。あとそこのは……竜を酔わす酒だな。」

店の物体を調べる度に謎の用途のマジックアイテムがゴロゴロ出てくる。
ラジオコンポのような現代的な魔道具もあれば、まるでおとぎ話に出てくるような装飾の懐中時計なんかもある。

「買いたいものがあったら言ってくれ。千江が包むから」

千江、と呼ばれる少女はティーポットをテーブルに置いて、ちょこんと男のいた席にちゃっかり座り寛ぐ。
105鳴神泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/27(火)18:57:46 ID:Eyc [3/4回]
>>104
「これ何の毛だ…?、でも確かに少し力が漲ってきた様な気がしますねー…」

手をグーパーしてみる。確かに魔力が増えたと実感できる程の代物ではある。

「へぇ…竜をですか?それ未成年でも買えますかね?」

泪がその名を聞いて迷わず選んだのは竜を酔わす酒だ
青年には不思議に移るのかも知れないが移動手段は翼で事足りるし籠や魔法石は全くその全貌がつかめない上に手持ちが少ない為今回は保留といったところ。

「あとですよ?魔法生物を狩ったりするのに使える道具とかってありますか…?」

青年に耳打ちで問いかける。
千江と言う少女がもし魔法生物の類であったとしたらの配慮だ。
106◆</b></b>MwoOgjEJkw<b>[] 投稿日:19/08/27(火)19:38:27 ID:pc1 [3/4回]
>>105

茶を片付けながらぶるぶるっ、と千江が身震いをしたような気がした。

「まぁ、竜を酔わせる物だからマタタビ買うみたいなもんだろ。それも千円ね」

お買い上げした陶器製の瓶に入った酒を、千江が紙袋に包んで渡す。

「....ありがとうございます」

耳打ちされた青年は、やはり耳打ちで返す。一応、千江をはばかるように。

「千江の前で話すのもなんだが、あるにはある。ただ最近武器を取引しに来る連中が妙に増えてきてね―――
―――お客さんそのうち何か手持ちのマジックアイテムがあったら売りに来てくれ。それなら信用できるから武器を見せる」

と、そんな耳打ちの後で、番台に向き直った。

「あぁそれはそうと、この店は普通の店じゃないんでね。
どんな下らん魔道具でも誰が誰に取引したか顧客名簿を取らにゃいかん。お客さん名前は?」

雨は、消えかけの小雨になり始めていた。
107 : ◆</b></b>MwoOgjEJkw<b>[] 投稿日:19/08/27(火)19:40:39 ID:pc1 [4/4回]
/次あたりで〆でお願いしまうs
108 : 鳴神泪◆</b></b>KxwiMtIIPk<b>[] 投稿日:19/08/27(火)21:27:02 ID:Eyc [4/4回]
>>106
「一応学生なんで、え?意外と安いんですね」

魔道具の相場なんてものは知りもしなかったがそれでも少々値が張る物だと思っていた。

「…やっぱり…」
「じゃあ何か手に入ったらまた来ますね!」

青年の反応から千江と言う少女が魔法生物の類である事を察するのは難しくなかった。

「鳴門海峡の鳴に神様の神、さんずいに目で鳴神 泪
です。」
「ありがとうございました!」

取引を済ませれば2人に手を振り雨がまた強くならない内に足早に帰路へとつくだろう。

//遅れましたが〆になります。ロールありがとうございました!
109狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/08/28(水)23:08:56 ID:Q4y [1/1回]
にゃあ、とか弱い鳴き声が不安そうに響いた。
公園に堂々と立ち聳える巨木の上の、頼りなく細い枝の先にしがみついた、見事な茶虎毛の猫のものだった。
遥か下の地面を見ては爪を立て毛を逆立て、身を竦めて時折鳴くのは自力で降りられなくなってしまったからで。
二股の尾を心細げに揺らしながら、助けを求める猫を見上げて右往左往している少女が一人。

「ど、どどどどうしよう……!?」

懸念に瞬く黒と金の瞳、助けたくてもいい方法がすぐに思い浮かばない焦燥に首飾りを握りしめる。
忙しなく無意味に行ったり来たりを繰り返すたびに、二つのおさげがゆらゆら踊る。

「つゆりは登れないし、ポチじゃ怖がらせちゃうし……ううっ、どうすればいいんだろ……」
110立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/09/01(日)12:36:15 ID:IOI [1/2回]
>>109
9月に入り、刺すような熱気もひとまずは落ち着いてきた今日この頃。丁度よい暖かな日差しは1日の大半を病院のベッドの上で無為に過ごすには勿体無いという気分にさせてくれる。
療養という観点からすればそれは正しい行いではあるのだろうが、ただ一日中何もせずにいるの言うのは非常に退屈だし身体もなまる、言ってしまえばこれはリハビリだ。

さて、未だ傷の完治せぬ身体で病院を抜け出す口実も出来た所で、無垢なる病衣に松葉杖と和傘を携えた窮屈な出で立ちの鏡花は特に目的も無く控え目な太陽の下を漫ろ歩いていた。
時折知覚魔法で辺りの様子を確認しては、音と白状代わりの和傘を頼りにただフラフラと。
けれどもやはり30分も経てば身体のあちこちが軋みを上げ始める頃合い、一旦何処かで休息を取ろうと足を踏み入れたのは天を衝く立派な巨木を湛えた公園。
ソナーめいて魔力を周囲に波及させれば、端っこに佇むベンチの存在を認めると共に、なにやら忙しそうに右往左往する小さな人の形をした気配を捉えた。

何処か不安げなそれ、身体が痛むが生憎と無視できるような性分では無いが故、身を翻せば蹌踉たる足取りでその人影の元へ。

「あのう…………どうかなされましたか?」

鈴の音色にも等しき声が、軈て貴女の鼓膜を叩く。見れば杖に身体を預けた二十半ばの女が一人。
その双眸は生来より光を通すことができないが故、固く閉ざされた瞼の奥に押し込められて。であれば少女の正体に気付けぬのは半ば必定。
取り敢えずは話を聞いてみるとしよう、見知らぬ人に手向けるような言葉を投げ掛けると同時、佳容なる顔立ちに穏やかな微笑を纏わせた。


//お返しは夜からになると思いますがよろしければお願いしますー
111狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/09/01(日)15:02:10 ID:wMk [1/2回]
>>110
うんうん唸りながら逞しい枝を見上げてあっちへウロウロ、こっちへそわそわ。
連れ合いがいない子供にしても、なんとも奇異な様子だが本人はいたって必死。
なにせ相手は魔法生物だ、窮地に気がつける人間は限られているし、下手をすれば自分が最後の一人になってしまう可能性だってある。
見なかったことにして、最悪衰弱されても目覚めが悪いし、彼女はそれを許容できるほどに冷血ではない。

「こうなったら、つゆりがどうにか――っひゃう!?」
「あっ……鏡花さん!つゆりです、狐塚の所の!」

だから声をかけられて肩を跳ね上げた後、その顔が見知ったものであるのを認めて愁眉を開いたのは、ある種の必然であった。
莞爾たる笑みに触発されるように揺れるおさげ、忙しなく砂を掻いていた茫洋の足取りがぱたりと止まる。
すっかり困り果てていた目尻が安堵に下がったのは、自分よりもずっと頼りになる大人を前にしたからに他ならない。
歓喜に上擦る声色を隠そうともせず、しかし先程からあぐねていたのを見られていたとなれば、容易く弱った語調に移ろう。

「それが……猫ちゃんが木に登ったら、降りられなくなっちゃったらしくて」
「魔法生物みたいだから、どうにかしてつゆりが助けてあげたいんですけど……」

だんだんと小さくなる声、そこから先は語るに及ばないだろう。妙案が思い浮かばないからこそ、こうして悶々としているのだから。
つゆりが説明している間も、合いの手を入れるように弱々しい猫の鳴き声が頭上から幾度か降り注ぐ。
音の広がりからして巨木のかなり上部で立ち往生しているらしい、黒と金のオッドアイが不安そうに柔和な面立ちと遠くの茶虎毛を行き来した。

//ありがとうございます、よろしくお願いします
112立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/09/01(日)22:27:40 ID:IOI [2/2回]
>>111
「つゆりさん?」

いつかの夜からの再びの邂逅、よもやこんな所でまた相見えようとは思ってもみなかった鏡花、表情に浮かべた疑問符を先駆けに、貴女の名前を紡いだのは至って自然な成り行きだ。

「どうかしましたか?何かお困りのようでしたが…………」

動揺を呈した所作から転じてわかり易く安堵を含んだ語り口、激しい感情の移ろいに疑問を呈せば事情を聞こうと語りだすもしかし、矢継ぎ早に繋がれていく貴女の言葉に遮られる。

「……なるほど、そういう事でしたか」

喜びで満たされた貴女の声は、憮然としていたのを良く表すように一言一句を刻む度にやがてだんだんとその音色を小さなものへと変えていく。
その全てを聞き届けた頃には幾分か鏡花の顔付きもやや真剣なものへと。
頭上から時たま聞こえる鳴き声の主はどうやら相当高いところまで登って行ったらしいと、木の葉の間隙に秘められた2尾の子猫を魔力の波で捉えた鏡花は一人静かにそうごちた。

「分かりました、お約束はできませんが…………やれるだけやってみましょう」

残念ながらそう便利な魔法は使えぬ身の上、この体では歩く事すら酷く消耗してしまうがやはりというかなんというか、鏡花もまた困っている誰かが居れば捨て置けぬ性分ゆえ。
木の幹に掌を当てて刹那の思考、取り敢えずは一旦人の目を欺く為にも人払いを済ませておくとしよう。鳥の囀り程度の小さな詠唱、ほんの数節からなるそれを済ませれば、何者の侵入をも阻む不可視の障壁が公園を覆い隠して。

カランと手放した松葉杖が音を立てて倒れる、やおらに白鞘を引き抜けば、日の元に晒されるは不吉が過ぎる紅き刃。
逞しい巨木に突き刺して、その刀身の中程までを沈み込ませればじゃらりとふいに金属の擦れ合う甲高い音が二人の鼓膜を刺激する。
見れば赤い桜が止めどなく、まるで血液の流出めいて突き立てた刃の先から溢れ出す。
まるで意思を持っているかのように動き出す季節外れの桜の花弁は凡そ有り得ぬ金属音を鳴らしながら1つの足場を作り出す。
1つ1つがカミソリめいたそれ、慎重に両足を乗せれば少しずつ、少しずつだが重力に逆らって上へと浮かび上がって。

「大丈夫ですかーーー………?」

子猫の居る枝に差し掛かったあたりで鏡花は優しく人の言を解さぬ動物に向けるには余りにも恭しい言葉を投げかける。
なるべく刺激しないように静かに緩慢に、足を載せた枝が動いて立てた葉音にも気を使いながら、やがて接近が叶えば確りと抱き上げようと子猫に両手を伸ばすだろうか。
113狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/09/01(日)23:05:07 ID:wMk [2/2回]
>>112
狐塚つゆりは困っているものを捨て置けず、それは何も人間に限った話ではない。
敵性のごく弱い魔法生物であれば尚更だ、一般の魔法使いと比べてもよくよく馴染みのある存在であるが故に。
だからこそ今も奥底からの心痛に眉尻を下げ、独力では解決策を見出せない焦燥に歯噛みしているのだ。

「本当ですか!?お願いします!つゆり、どうすればいいのか分からなくって……つゆりに出来る事でしたら、なんでもしますから!」

したがって快諾の言葉に鉛雲の切れ目の如くぱっと顔を輝かせて、勢いよく頭を下げるのも必定と言えた。
ふんすと肩に不必要なまでの力を入れて、希望の光を垣間見た安堵に満ち満ちた奮起の表情。
人払いの隔壁を肌で悟れば魔術的な技能を用いると察するのは易い、期待と好奇に見開いた瞳で彼女の一挙一動をまじまじと見つめ。
初めに鼓膜を叩いたのは、松葉杖が倒れる乾いた音だった。支えを失って大丈夫だろうか、肩でも貸そうとしたのもほんの束の間。

「えっ……ちょっと、鏡花さん!?何して――」

陽の光を浴びて妖しく煌く紅の刀身が、心配りを困惑にあっという間に塗り替えた。信頼と憂慮に揺れた天秤が、体をその場に繋ぎ止める。
そうして目をぱちくりさせている間にも、泰然と佇む幹に刀が埋まるものだから言葉を失って呆然と見ているだけしかできず。
しかしその狼狽は生まれた瞬間に散る定めの花弁が形を取るにつれて、驚嘆と感慨に変わる。

「わぁ……すごい……」

間の抜けた呟きが深緑を彩る朱を擽る頃には、枝の上で毛を逆立てる猫の元に辿り着けるだろう。
二股の尾のそれは、地面に囚われず目の前に現れた人間を目の当たりにすれば、しばらくの間警戒を顕にして細い枝で一定の距離を保つべく後退っていたが。
元々人に慣れているのだろう、やがて敵意がないと分かればさしたる抵抗もなく腕に収まるはずだ。
114立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/09/02(月)00:27:19 ID:pOK [1/3回]
>>113
感慨に浸る貴女は今や遥か見下ろす程に遠く小さく、今にも散りそうな不安定な赤い花弁の集合体に27年と生きた己と人生と命を預けている事実に思わず足が竦みそうになる。
背中を伝うぞわぞわとした感覚に鏡花は呆れた、試した事もないのに我ながらとんだ博打を打ったものだと、うっすらと浮かび上がった恐れを浅い自嘲で曖昧に糊塗すれば。

「うん、大丈夫、大丈夫…………」

鼻先まで差し出した指先を顎から喉へ、首から胴へと遊ばせる。緑を一杯に蓄えた細枝が一人と1匹の重みで魚を捕らえた釣り竿のように大きく撓る。
焦りは禁物、峡谷に張られたロープを命綱無しで渡るに等しい行為だが、急いては事を仕損じると言うものだ。

「ほら、怖くない」

そして警戒を解いた猫を抱き上げる事が叶えば、じんわりと汗の滲んだ顔を慈愛で満たして確りと腕の中に抱き止める、時折声を掛けては白蛇の如き指を茶虎に沈めて。
ふわりと鉄の桜に降り立つと同時、急に襲った疲労感が鏡花の集中を強く撹拌する、1つの大きな花弁を成した集合体の一部が制御を失いつぶさに散る。
木漏れ日を浴びて煌めきながら舞い落ちるそれらは息を呑む程美しい、されどもこの場においてそれらが辺り一帯に散り彩るのは鏡花にとって死の宣告にも相応しい。
ああだけど、知覚と操作の2つの魔術の行使は平々凡々なる才覚の鏡花にとってかなり負担が大きい。膝を付いて節々に走る痛みを無視して気力だけで支えるがしかし、5m程の高さ、地上を眼前にしてついにはそれも果ててしまう。

「あっ………!きゃあっ!!」

儚く消えた赤い花、鈍化する主観時間の中で無意識に鏡花は空を覆う深緑への開いた手を差し出すも無情、そこに自由落下めいて重力に引かれた彼女を繋ぎ止めるものは何も無い。
ただ虚しく空を切る、無意味を悟った鏡花は強く、この胸で息づく命だけは手放すまいと子猫の小さな身体の輪郭をなぞった手に力を込めた。
115狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/09/02(月)01:10:07 ID:P4s [1/3回]
>>114
「ああ、よかったぁ……ね、ポチ」

鏡花の背筋を撫でる恐怖の手は生憎と彼女には見えず、双眸にはその姿の如何に放胆に映ることか。
憧憬と心弛に肩の力がふと抜ける、思わずして胸元で微睡む相棒に返事を求めない声が漏れた。
呑気に一人と一匹を見上げ、無事猫がしなやかな腕の内に抱かれたのを認めて大きく両手で手を振ったが。

「……あれ?なんだか……どうしたんだろ?」

最初の違和感は萌葱に滲んだ一点の赤。遠目ではその仔細こそ分からずとも、それが足場である花弁の一端であることは想像に難くない。
事ここに至って、ようやく不安定な樹上から地面に降り立つまでの行程がどこか朧であるのに気がつくのだ。
猫を確保しただけではこの救出劇は終わらない、まだ安心できる状況ではなかったのに浮かれた自分を叱咤したくなった。
けれどそんな暇はない、季節外れの桜が舞い散ることは即ち彼女の足がかりが失われると同義なのだから。
散華が果たされて重力に鏡花の体が委ねられたと同時。首に提げた竹筒が、急かすように魔力を帯びた。

「っ――ポチ、お願い!!」

その意を汲むのは花弁が風に浚われるよりも早い、剣幕に触発された苛烈さで竹筒から溢れる黒の流体。
か細い怯懦の鳴き声が落下の風に溶けるその真下、みるみるうちに等身大へと近づく人型の影に身を滑らせたかと思えば。
象るのは生物ですらない、光を呑む暗黒の球体であった。中心がややへこんでいる辺りから、クッションを想起させる造形。
奇怪極まりないそれは落ちる手負いの体を黙して受け止めれば、深く沈んで位置エネルギーによる衝撃を限りなく押し殺すだろう。
不明瞭な材質は柔軟性と弾力を兼ね備えているようだから、何度かそのクッションめいたモノの上で弾むことになるかもしれないが。
どうあれ重力の鉄槌を完全に昇華させれば、それは座椅子の如く鏡花の体を抱いて大地の歓迎を伝えるはずだ。

「鏡花さん!大丈夫ですかっ!?」

焦燥に駆られた呼び声。ぱたぱたと駆け寄ったかと思えば、ゆっくりと助け起こそうと鏡花の肩に触れる小さな手。
しっかりと抱きかかえられていたおかげだろう、猫にも大事はないようで、二本の尾で鏡花の頬を優しく撫でた。
116立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/09/02(月)09:33:46 ID:pOK [2/3回]
>>115
背中に流した黒曜の髪が落下を始めた鏡花の身体に尾を引くように虚空に靡く。
大きく掻き乱された集中は知覚魔法の維持すら困難なものにさせて、腕に収めた温もりだけを感じて暗い暗い闇の中に鏡花は一人。
刹那にも満たない瞬き程度の間隙が嫌に長く感じる、固い大地の抱擁を覚悟した鏡花の身体を包むのは、ゴム鞠のような反発力を帯びた不可思議な物体。
トランポリンめいたそれと宙を2.3度程も往復すれば、勢いを無くして次第に円形を象ったポチの全身に沈み込む形となろうか。
困惑して立ち上がろうと頭を起こした鏡花だが、余す事なく焦慮で満たした貴方の声を聞けば軈て脱力、ああ、どうやらまだ三途の川を渡らずに済んだらしい。

「ええなんとか………」

だいぶ神経をすり減らした、助けようと肩に触れた小さい手の導くままに上体を起こした鏡花の呼吸は短く早い、けれど頬の輪郭をなぞった尻尾の感触を認めれば心からの安堵に口許を緩める。

「はは………また助けて頂きましたね…………」

数分ぶりの地面を踏みしめる、落ちもしないし動きもしない、当たり前だがそんな事実が何よりも安心出来る。塵埃で汚れるのも構わずに膝を付けば、にゃあと鳴く猫を貴女に差し出しながら呟きを零す。
浮かべたる表情は可憐な笑顔、けれど何処か気恥ずかしそうなのは思う所があったから。
これで貴女に救われるのは2度目、今回は彼女の頼みという事ではあるが滞り無く進められずに醜態を晒した事実は変わらずただただ恥じ入るばかり、真面目過ぎるのも考え物だ。

「野良…………でしょうか?その猫ちゃん」


///急用が出来て外出していました、事前にご連絡できずすみません!
117狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/09/02(月)15:12:08 ID:P4s [2/3回]
>>116
金花猫と呼ばれるそれは猫又種の中でも特に温厚だ、こうしてなんら抵抗もなく人間の腕に収まっている程度には。
だからつゆりへの受け渡しも容易く行なわれる、確かな命の重みに不安げだった口元が萌芽の如く綻んだ。
けれど卑下と自嘲を孕んだ微笑みは全くの不本意に相違ない、両手は塞がっていたから大きく首を横に振って全霊での否定を示す。

「いえっ、助けてもらったのはつゆりの方です!つゆり一人じゃどうしようもなかったし……」
「それにあんなに高い所まで助けに行った鏡花さん、すごく格好良かったです!猫ちゃんもきっと感謝してますよ!」

呼応するように喉を鳴らす猫。それが人語を解するが故であるかどうかは伺い知れぬところだが。
つゆりのその焦燥と鼓吹の根底にあるのは憧憬だ、身を呈して他の命のために事を成す鏡花の心意気への。
見事なまでの大和撫子然とした立ち振舞いもその一端を担うのだろう、だからこそ自省の念など抱いてほしくないのだ。
ポチは鏡花を受け止めた球体のまま、やにわに触手めいた腕を伸ばしたかと思えば、倒れて放置されていた松葉杖を拾い上げると、そっとその手に触れさせた。

「多分……野良かな?この辺でお散歩してるの、よく見かけますし」
「前につゆりも拾ってあげようと思ったんですけど、すごく嫌がられちゃって」

きまりが悪そうな苦笑、猫とは往々にして気紛れであり束縛を嫌うのもそうおかしなことではないのだが。
猫はといえばつゆりの腕から上体を乗り出して、すんと鏡花の手を嗅いだかと思えばざらついた舌で肌を擽るだろう。

「でもでもっ、いつもこうして触らせてくれるんですよ!大人しくて人懐っこい、いい子なんです!」

//お気になさらず、こちらは夜まで不安定になりそうです
118立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/09/02(月)17:30:02 ID:pOK [3/3回]
>>117
///今日は返信が難しそうです スミマセン!
119 : 狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/09/02(月)17:49:06 ID:P4s [3/3回]
>>118
//了解しました、ご自身のペースで大丈夫ですのでご無理なさらず
120立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/09/03(火)18:54:55 ID:BCh [1/1回]
>>117
手に乗っていた重みが無くなれば、成すべき事を成した安心感に小さくしかし深い長息を呈す。今日途絶える定めにあるやも知れぬ腕に収まるか弱い命、それを救って明日へ繋ぐ、それは今ここに確かに果たされた。

「そ、そうですか………?格好良いだなんてそんな………」

滔々たる語り口、紡いだ言葉の1つ1つに称賛の念を憚ることなく加え入れる事が出来るのは、彼女が無垢なる子供であるが故なのだろうか。
得も言われぬ擽ったさに頬を掻く。それが気遣いなんて野暮な感情から来るものではないのは分かっている、だけど、だからこそこんな小さな少女にここまで言わせたとあれば、それを否定するのはそれこそ野暮というもの。

「いえ………大人なんですもの、もっとしっかりしなくてはいけませんね
なんだか元気が出ました………ありがとうございますつゆりさん、それと………ポチも」

松葉杖の感触を手に受ければそれを受け取って、貴女とポチへの感謝を述べれば莞爾として笑い掛けるだろう。空いていたもう片方の鏡花の掌が、さらと貴女の黒髪を優しく撫でようとして。
ああそうだとも、過程がどうあれ、私が手を差し伸べた他ならぬ彼女自身が感謝と敬慕を向けてくれているのだ、それを受け入れずして一体どうする?
だから自分を恥じるのはやめにしよう、今はただ、貴方の言葉のみを受け入れて。

「私も小さい頃に懐いてくれた野良の子を迎え入れようとした事がありますが………いつも居た所から離れようとしませんでした
この子も自由に生きるのが性に合っているのかも知れませんね」

刺々しい舌が白い鏡花の指先の輪郭をなぞれば、気を良くしたのかくつと喉を鳴らせば人差し指を猫の顎に差し入れる。
動物を飼っていたことはないが、それでも往来の道すがらに擦り寄ってきた猫を愛でる事くらいはあるが故、彼らが好むポイントは心得ているつもりである。

「私は少しここで休んでいくとしましょうか…………つゆりさん、貴女も暫くここに?」

//お待たせいたしましたー、明日は一日通して出来ますが、今日も返信は難しいのでもしも微妙な感じでしたらここら辺で〆でも大丈夫ですー
121狐塚 つゆり◆</b></b>LlFsi2oBtE<b>[] 投稿日:19/09/03(火)21:43:42 ID:o2g [1/1回]
>>120
まくしたてて数秒を置いてから、ようやく自分がどれだけ恥ずかしいことを口走ったかに気がついたのだろう。
見えているはずのない頬を仄かに赤く染めて、見事な茶虎の毛並みで覆い隠してしまったが。

「んみゅっ……本当ですか?えへへっ、どういたしまして!」
「つゆりもいつか鏡花さんみたいな、ステキな大人になれるように頑張りますから!」

黒糸をなぞる白指に思わず顔を上げて声を漏らし、ほんの束の間の呆然と甘受。
それから温良ともまた異なる明朗の笑みを湛え、くすぐったさそうに肩を微かに捩った。
鏡花の背後で控えていたポチもまた、言葉に応えるようにぐると唸ったかと思えば、その形を流体に崩してつゆりの首飾りへと瞬く間に収まり。

「ううん、そういうものなんですか……?つゆりは家がないと困っちゃうけどなぁ」
「それにさっきみたいに、また木から降りれなくなっちゃっても大変ですし」

自由と放蕩を大凡等号で結びつけられず首を傾げるつゆりを尻目に、喉元を撫でられて心地よさそうにごろごろと喉を鳴らす猫。
目を細めてもっと撫でろと言いたげに自分から頬を寄せる不遜な態度を眺めながら、殊更に難しい顔を浮かべるつゆりの思考は、どうやらもっと別に向いているようで。

「あれ、家といえば何か忘れてるような――――あっ……ああーーーっ!!!」

その答えに辿り着くや否や、唐突に葉擦れさえ起きるほどの大声が他者のいない公園を揺らした。
驚いて腕から逃げた猫にも拘わず、わなわな震える腕と大きく見開かれた眼からして、どうやらあまり好事ではないようだが。

「おっ――お使いの途中だったんでしたぁ!どうしよう、早く帰らないと……!!」
「ごめんなさい鏡花さん、つゆりはこれで失礼します!今度はもっとゆっくりお話しましょうね!お大事にっ!」

その理由はなんとも年に見合った小さなものだ、とはいえ彼女にとって大きな比重を占めている。
泡を食って大仰に一礼、ばたばたと忙しなく駆け去る姿はまだまだ大人とはかけ離れた騒がしさで。
残夏に置き去りにされた喧噪にヒゲを揺らした猫又が、なおと鳴いて足に胴をすり寄せた。

//それではこちらはこれで〆に致しますね
//長らくお付き合いいただきありがとうございました、お疲れ様でした
122 : 立花 鏡花◆</b></b>f0hOv27hdI<b>[] 投稿日:19/09/04(水)14:03:05 ID:wxd [1/1回]
>>121
そろりそろりと、喉を鳴らす猫の機嫌を伺うようにして立派に茶の毛を蓄えた顎を擦り擦り撫でる。
彼らは皆往々にして自由気ままで気分屋だから、もう一撫で二撫でした頃にはその手をはたき落とされて居るかもしれないなんて思いがその手付きを自然と恐々としたものにさせるのだ。

「………きっとなれますよ、つゆりさんなら」

けれど彼は私を気に入ってくれたようで、それは何気ない会話の内に当初の目的を想起した貴女の叫びが空を揺るがすまで続くだろうか。
弱きを尊び、他者を敬い、時々弱気で、でもちゃんとした芯を持っている。この瞼の向こうでコロコロと表情を変えているであろう少女はきっと、喜怒哀楽の振れ幅が人よりも大きいのだろう。

「ああ………これはこれは大変ですねぇ………お忙しいのですね、つゆりさんは
クス、さようなら。転ばないように気を付けて帰るんですよ?」

そんな貴女に向けた鏡花の顔は慈愛に満ちて。彼女と一緒に居ると退屈なんて無縁な物に思えてしまう。
けれど出会いがあれば別れがあるのだって必定だ、離れていく忙しい足音にほんの少しだけ寂しそうに顔を落とせば閑麗なる顔立ちに一筋の影が差す。


人の表情なんて見た事がないけれど、でも少なくともあの少女が私に見た人間像はきっとこんな顔なんてしていなかっただろう。だからなるべく笑顔でいよう、良く笑うあの子に恥じないように。
二又の尾を揺らして鳴いた茶虎の猫を両手で抱いて掲げれば、自然と面を上げて暖かな日差しが眩しい程にシルクで編んだ様な肌を明るく照らして。

「素敵な人、か……………」

小鳥の囀りにも掻き消えよう小さな独白が一人と一匹だけの公園に溶けて無くなる。

………………ああでも、この顔だけは見せたくないなぁ、緩みに緩んだ、この笑顔だけは。


//こちらこそお付き合いありがとうございました、お疲れ様ですー!


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